2008年6月28日(土)「しんぶん赤旗」

どうみる北朝鮮の核申告

朝鮮半島 非核化へ一歩


 「六カ国協議が打ち出した段階的プロセスの重要なステップだ」。二十六日、北朝鮮の核計画申告を受けて、テロ支援国指定の解除を米議会に通告したブッシュ大統領は、声明の中でこう述べました。六カ国協議の合意に基づき、非核化への新たな一歩を踏み出した北朝鮮核問題。その解決は、朝鮮半島と北東アジアの新たな平和の秩序につながるものです。


 米朝がそれぞれ実施した核申告とテロ支援国指定の解除通告は、六カ国協議で合意した「第二段階」で残されていた核心部分での前進といえます。申告の範囲と内容をめぐる米朝の協議を踏まえ、北朝鮮がこれまで行ってきた核開発の実態を把握し、検証していく土台が築かれたからです。

 六カ国協議が始まった二〇〇三年、米ブッシュ政権は北朝鮮を「悪の枢軸」と非難、先制攻撃も辞さない姿勢を見せていました。北朝鮮は、これを「宣戦布告」と受け止め、核武装を推進しました。世界一の軍事力を誇示し、北朝鮮に核放棄を求める米国と、“核カード”で米国に「敵対政策」の放棄を求める北朝鮮の対立は、朝鮮半島と北東アジアの緊張を高めました。北朝鮮の核開発は、日本の安全を直接脅かすものでした。

6カ国協議「共同声明」

 それに転機をもたらしたのが、〇五年九月の六カ国協議の共同声明の採択でした。共同声明は、北朝鮮核問題を「平和的方法」で解決する原則を改めて確認。北朝鮮は、すべての核兵器、核計画を放棄し、核不拡散条約(NPT)に復帰することを約束しました。六カ国はそれに対応した措置を「行動対行動の原則」に基づき、段階的にとっていくことで合意しました。

 協議に参加した六カ国が、国連憲章と国際規範を順守し、朝鮮戦争(一九五〇―五三年)以来、対立を続けた米朝両国が、相互の主権尊重、平和共存を確認したことも、その後の交渉を進める上で重要な基礎となりました。

 〇六年の北朝鮮の長距離ミサイル発射と核実験は、新たな緊張をもたらしましたが、国際社会が、六カ国協議の枠組みでの解決を一致して要求。米国は、米朝二国間協議を拒否していたそれまでの政策を転換しました。米朝協議を受けて北朝鮮は六カ国協議に復帰し、核放棄に向けた「初期段階」(〇七年二月合意)、「第二段階」(〇七年十月合意)の措置がとられることになりました。

 米朝両国が実施した措置は、核問題の背景にある、六十年近くにわたり続いた米朝対立の解消、清算の第一歩という点でも大きな意味を持っています。

 米国が、テロ支援国指定の解除通告とあわせて解除を表明した対敵国通商法は、朝鮮戦争の時期から続くもので、北朝鮮の国際経済システムへの参加を阻む障害となってきました。北朝鮮が「敵対政策」の象徴として最も強硬に主張してきた要求の一つでした。

核兵器放棄次の段階に

 六カ国協議は今後、北朝鮮の核申告の内容を検証。二〇〇五年の共同声明で約束された「すべての核兵器と既存の核計画の放棄」に向けた新たな段階の議論に入ります。

 共同声明は、朝鮮半島の非核化とあわせ、北東アジア地域の緊張要因となってきた米朝、日朝関係の正常化を各国の約束として確認。国際法上は今も続く朝鮮戦争を終わらせ、朝鮮半島に恒久的な平和体制を築く目標を掲げています。

 地域の対立要因を取り除いた先にあるのが、六カ国協議を通じて、紛争を平和的に解決し、協力を増進する「北東アジアの永続的な平和と安定」(〇五年九月の共同声明)の地域安全保障体制です。長く続く対立構造を終えんさせ、新しい秩序をこの地域に確立できるかどうかは、米朝両国をはじめとした六カ国協議参加国すべての努力にかかっています。(中村圭吾)


拉致解決の促進にも

 日朝間の懸案である拉致問題の解決も、核問題を含む北朝鮮にかかわる諸問題に包括的に対処するなかで前進をはかることができます。

 国交がないままの日朝関係を前進させる大きな契機となったのが、二〇〇二年九月の日朝首脳会談と、そこで合意された日朝平壌宣言でした。それに先立つ日朝外務省局長級協議(同年八月)で、「日朝間の諸懸案の解決を包括的に促進するという方式」(共同発表文)が確認されたことが、首脳会談の開催に結びつきました。

 首脳会談で北朝鮮側は、不十分ながらも拉致の事実を初めて認め、一定の謝罪をしたのです。

 〇五年九月の北朝鮮核問題に関する第四回六カ国協議の共同声明は、米朝国交正常化問題と並び日朝国交正常化問題を明記。両国が「平壌宣言に従って、不幸な過去を清算し懸案事項を解決することを基礎として」国交正常化の措置を取ると約束したと規定しました。

 これにより、平壌宣言の方向は、二国間の合意にとどまらず、六カ国協議の合意という国際的な裏づけを得ることになりました。

 昨年二月の第五回六カ国協議では、朝鮮半島非核化や米朝国交正常化などとともに日朝国交正常化の作業部会がつくられました。同会合の合意文書では、「ある作業部会における作業の進捗(しんちょく)は、他の作業部会における作業の進捗に影響を及ぼしてはならない」ことが明記され、「包括的解決」路線がいっそう具体化されました。

 今年六月十一―十二日には日朝実務レベル協議が北京で開かれ、外務省の斎木昭隆アジア大洋州局長が出席しました。同氏は、「六カ国の中で日朝がまったく動いていないという図式は、六カ国(協議)全体を進めるということでもマイナスだ。日朝が進めば六カ国は進む。日朝が進まなければ六カ国は停滞する」と北朝鮮側に説明し行動を促したと述べています(十七日の日朝国交正常化推進議連総会での発言)。

 その結果、北朝鮮側は、「拉致問題は解決済み」というこれまでの態度を変更し、その再調査を約束しました。

 このような経過は、「核兵器問題が道理ある形で解決されるなら、日朝間の懸案である拉致問題の解決についても、その進展をうながす新しい条件となりうる」(二十六日の日本共産党の志位和夫委員長の談話)ことを示しています。(坂口明)



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