2008年6月13日(金)「しんぶん赤旗」

微修正で延命はかる

後期高齢者医療 政府の「手直し」


 政府・与党が十二日に合意した後期高齢者医療制度の「手直し」方針は、広がる一方の国民の怒りを前に、あわててとりまとめたものです。しかし、制度の「円滑な運営のため」「将来にわたり維持するため」と明記したように、高齢者を年齢で差別する制度の根幹には一切手をつけませんでした。保険料の一部軽減など「微修正」で、批判をかわそうとするものにすぎません。

 今回の「手直し」は、年金収入八十万円以下の世帯の保険料を九割軽減することなどを「売り物」にしています。しかし、対象人数は約三百六十万人で、七十五歳以上全体(約千三百万人)の三割以下にすぎません。政府試算でも、今回の軽減策で、負担が増える世帯の割合は、全国平均で31%から25%にわずか6ポイント変わるだけです。

 また、二年ごとの見直しで際限なく保険料を値上げしていく仕組みそのものは温存するため、たとえ今回保険料が下がっても、将来の保険料がどんどん上がり続けることに変わりはありません。

制度は破たん

 七十五歳以上を別建てにした診療報酬(医療の値段)は、「終末期相談支援料」について「凍結」を含めて議論することなどを打ち出しました。「後期高齢者の心身の特性にふさわしい医療が受けられる」などと大宣伝していた診療報酬の見直しを言わざるをえないこと自体、制度の破たんを示しています。

 二〇〇六年の医療改悪法によって導入が決まった後期高齢者医療制度は、実施前から「手直し」の連続でした。昨年七月の参院選で大敗した与党は、十月に負担増の一部「凍結」をすることで乗り切る構えでした。

 しかし、四月の制度実施を前後して、全国各地で国民の怒りは爆発しました。福田政権発足後初の国政選挙・衆院山口2区補選(四月二十七日投開票)では、自民党候補が惨敗。沖縄県議選(八日投開票)でも、日本共産党が躍進したのに対し、自民党は四議席減らし、与党が過半数割れに追い込まれました。これらの選挙の結果は、制度存続のための政府・与党の「手直し」に、国民は納得しないという審判を突き付けたものです。

根幹に怒りが

 保険料対策をすればごまかせるという、与党の発想が間違いです。国民が怒っているのは、負担増だけではありません。七十五歳以上の人を「後期高齢者」と呼び、ほかの世代と切り離して際限のない負担増に追い込むとともに、受けられる医療を差別するという制度の根幹そのものに、怒りが噴出しているのです。

 間違った設計図で建てた家にいくら「修理」を重ねても、欠陥はなくなりません。いま必要なのは、間違った設計図をつくり直すことです。

 場当たり的な見直しは、制度を運営する地方自治体の現場をさらに混乱させるものでもあります。「手直し」という悪あがきで制度の延命にしがみつくのではなく、きっぱりと制度を廃止することこそが、国民の声にこたえる道です。(秋野幸子)



■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp