2008年6月5日(木)「しんぶん赤旗」

シリーズ 廃止しかない 後期高齢者医療制度

老いも若きも負担増


 政府・与党は、後期高齢者医療制度の導入の口実に「現役世代の負担を減らす」ことをあげています。しかし実際には、現役世代にも保険料値上げがおそいかかっています。シリーズ「廃止しかない理由」の最終回は、現役世代を直撃する負担増をみました。


保険料1.2倍

 「四月から高齢者医療制度が変わり、健保組合の保険料が急増します」

 テンプスタッフなど約四百社の人材派遣会社、約四十五万人が加入する人材派遣健康保険組合が、こんなお知らせを加入者に配布しました。

 派遣健保の健康保険料は、これまで収入の6・1%(これを労使で負担)でした。それが四月から7・6%(同)に上がりました。月収二十四万円の派遣労働者の場合、これまで月七千三百二十円だった保険料が、四月から九千百二十円に。月千八百円、一・二倍の負担増です。給与明細を見た派遣労働者からは、「今後どれだけ上がるか不安」などの声が出ています。

 大企業のサラリーマンなどが加入する健康保険組合の全国組織「健康保険組合連合会(健保連)」の調査では、四月以降「保険料率を引き上げる」と回答したところが、全体(千五百二組合)の約一割にあたる百四十一組合にのぼりました。

 現役世代の保険料が上がるのは、後期高齢者医療制度導入にともなう負担変更によるものです。

 これまでの「老人保健制度」が新制度に変わることで、組合健保、政管健保など現役世代が負担するお金も、「老人保健拠出金」から「後期高齢者支援金」に変わりました。六十五―七十四歳の医療費に対する「前期高齢者納付金」も、四月から始まりました。

 高齢者医療の二つの制度変更によって、これまでの拠出金・納付金と計算方法が変わりました。このため、〇七年度に比べて組合健保が四千三百億円、政府管掌健康保険が千五百億円、共済組合保険が千百億円の負担増となりました。

 この制度変更は、全体として国民健康保険の負担を減らすしくみだと説明されています。しかし実際には、「後期高齢者医療制度の実施」を理由にして、国保料(税)を値上げする自治体もあります。

 政府・与党は、「世代間の負担の公平」などといっています。しかし実際には、すべての世代に負担増を押し付ける内容になっているのです。

違反に罰則

 「後期高齢者支援金」には、とんでもない“ペナルティー(罰則)”があります。

 四月に始まった「特定健診・特定保健指導」(いわゆる「メタボ健診」)。健診の受診率やメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の改善状況によって、組合健保や国保などが負担する支援金を、最大10%加算したり減らしたりする仕組みを取り入れました。

 受診率が低かったり、従業員のメタボの改善がすすまないと、支援金が上がることになります。

 この加減算は、二〇一三年度から動き出す予定です。制度をこのまま継続させると、こんなペナルティーが始まってしまいます。

扶養家族も

 いままでサラリーマンなどの扶養家族だった七十五歳以上(約二百万人)への新たな保険料負担も、現役世代にのしかかります。

 六十五歳―七十四歳の国保料の年金天引きも、十月から本格化しようとしています。

 与党の「手直し」は、これらの制度の「定着」を狙うもので、根本的な解決とは無縁のものです。現在も将来も国民に災厄をもたらす医療制度は、廃止しかありません。(秋野幸子)

図

世代間対立あおる政府

給与明細の「特定保険料」表示

 厚生労働省は、サラリーマンなどが支払う健康保険料のうち、六十五歳以上の高齢者の医療保険にまわる分を、給与明細に「特定保険料」として明示するよう企業などに求めています。一部企業では、五月分の明細から記載が始まっています。

 これまでは、毎月支払う保険料のうち高齢者へまわる分がいくらかなど、知らせてきませんでした。今回のやり方は、現役世代が「高齢者のため」にどれだけ負担しているのかが一目でわかるようにして、高齢者との“世代間対立”をあおるものです。



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