2008年4月22日(火)「しんぶん赤旗」
主張
後期高齢者医療
世論と医療現場の抗議を聞け
高齢者の人間としての尊厳を否定し差別医療を押し付ける後期高齢者医療制度がスタートし、保険料の年金からの天引きも実施されました。高齢者と国民の怒り、医療現場の抗議の声がますます広がっています。
各紙が先週末に実施した世論調査によると、実施が強行された後期高齢者医療制度への厳しい批判などによって、内閣支持率は発足以来最低の20%台に下落しました。
「朝日」の調査では、後期高齢者医療制度を「評価しない」と答えた人が全体で71%、内閣支持層でも過半数に上っています。
各地の医師会が反対
医療の現場で、この制度への反対の動きが急速に広がっています。
「しんぶん赤旗」の調査(二十日付に掲載)によると、全国の都道府県の医師会のうち少なくとも十の医師会が制度そのものに「反対」しています。症状に応じて当然必要になる医療を抑制し、医療費の削減を狙って導入された仕組み(後期高齢者診療料)への批判を表明した医師会を含めると二十を超えています。
制度に「断固反対」し撤廃を求めている茨城県医師会は、「みなさん、こんな高齢者いじめの制度が許せますか!」と大書したポスターを作製しました。会員の医療機関、介護福祉施設などで、約三千枚のポスター張り出しと署名の運動を進めています。宮崎県医師会は「七十五歳以上の高齢者を差別し、過度の負担を高齢者に押し付け、限られた年金から保険料を天引きし、保険料を滞納した場合には保険給付を停止する等、医療費削減のみを目的とした弱者切捨ての制度です」と厳しく批判しています。
兵庫県医師会の西村亮一会長はホームページで、「財政の問題だけで生命を七十五歳以上で区別するような制度は、早く取り止めていただきたい」とのべています。
お年寄りの命と健康を預かり、そのとまどいや苦しさと直面する医療の現場から、制度の撤廃を求める声が上がっていることを、福田内閣と与党は重く受け止めるべきです。
ことし七十五歳のお年寄りが生まれたのは一九三三(昭和八)年、日本軍が中国で侵略を拡大し、「蟹工船」を書いた作家の小林多喜二が特別高等警察の拷問で虐殺された年です。ドイツではヒトラーが首相に就任しています。未曽有の悲惨な体験をくぐりぬけ、戦後日本の復興のために、文字通り身を粉にして働いてきた世代です。
そういう世代が高齢期に入って社会の支えがいよいよ必要になったときに、命を切り捨てるような制度を押し付け、肩身が狭くなる思いを味わわせているのです。お年よりの暮らし向きにかかわりなく、有無を言わせず保険料を年金から天引きするやり方に、この制度の非人間的な本質がはっきりと表れています。
中止に追い込むまで
よりによって、こんな制度を「長寿」医療制度と呼ばせる福田内閣は、強行採決で制度を創設した小泉内閣に劣らないほど、庶民のくらしや日々の思いに冷淡です。政府、自民党、公明党には、とても温かい血が通っているとは思えません。
自民党内からさえ制度を見直す動きが出ています。後期高齢者医療制度を考える議員連盟の十七日の初会合には、代理を含めて九十一人の自民党国会議員が参加しました。
この制度への国民の怒りの大きさ、抗議の声が与党をも揺るがせています。後期高齢者医療制度を中止・撤回に追い込むまで、世論を広げに広げようではありませんか。