2008年3月13日(木)「しんぶん赤旗」

主張

「武藤総裁」否決

日銀の責務にふさわしくない


 参院本会議は十二日、福井俊彦・日銀総裁の後任として福田内閣が提示した武藤敏郎・副総裁の総裁への昇格を、日本共産党など野党の反対多数で否決しました。

アメリカ追随を正当化

 日銀がアメリカの圧力も受けて十数年来続けている超低金利政策は、国民の利子を三百兆円も目減りさせてきました。他方で銀行は「ただ同然」の預金金利による利ざやで稼ぎ、大企業は融資金利の引き下げで巨大な利益を受けています。

 とりわけ貧困と格差を拡大した小泉「構造改革」を日銀が異例の金融政策で後押ししたことは重大です。

 日銀は米ブッシュ政権の要求もあいまって、ゼロ金利に加えて、「量的緩和」と称して一時は三十五兆円規模の資金を銀行に供給してきました。家計の貯蓄が大幅に減少する一方、なりふりかまわない金融緩和で大企業・大銀行と投機市場にはお金があふれ、本末転倒の資金の流れをつくりだしています。

 こんな金融政策を日銀は「ダム論」で正当化してきました。企業収益をダムの水位に例えて、水位が上がれば下流の家計に流れ出すという主張です。しかし、「大企業を中心として、バブル期を上回る、これまでで最高の利益」を上げているにもかかわらず、「給与の平均は、ここ九年間連続で横ばい、もしくは減少」と、福田康夫首相でさえメールマガジンに書かざるを得ないのが実態です。日銀の主張が完全に破たんしていることは明らかです。

 日銀の使命は、金融政策を通じて「国民経済の健全な発展に資する」

(日銀法第二条)ことにあります。その責務に照らして、いま日銀に求められているのは、大企業・大銀行に奉仕する金融政策から、国民の家計、中小企業の経営を支える金融政策に転換することです。

 サブプライム問題をきっかけに金融・経済が大混乱に陥っているアメリカが、どんどん政策金利を引き下げています。日本への利下げ圧力が高まったとき、日銀が自主性を貫けるかどうかがきわめて重要です。

 武藤副総裁の総裁就任は、いずれの点から見てもふさわしくないことは明白です。武藤副総裁は国会での所信質疑で、アメリカの要求に屈して低金利を続け、狂乱のバブル経済を生んだ一九八〇年代後半の金融政策を、「正しい判断だった」と擁護しました。

 武藤氏は、小泉内閣のもとで財務事務次官としてかかわった予算編成で、社会保障の自然増を大幅に削減するレールを敷きました。概算要求基準で経費の項目で分けるやり方をやめ、「裁量的経費」と、制度にさかのぼって見直す「義務的経費」に分類し、社会保障を義務的経費の大枠に含めて削り込む仕組みをつくりました。これについても「政治的に受け入れられた判断だった」とのべ、何の反省も示していません。

空白にしないために

 日本共産党は副総裁に推された二人の案件にも反対しました。経済財政諮問会議の伊藤隆敏氏は「構造改革」推進の中心であり、到底認められません。従来の金融政策の枠を出ない白川方明・元日銀理事にも賛成できません。

 政府・与党は野党に「日銀総裁の空白を生む責任は重い」と責任を転嫁しています。しかしこれは、政府提案には無条件で賛成しろという国会同意を形骸(けいがい)化させる議論です。

 日銀総裁を空白にしないためには、人事の提案権を持つ政府が、各党の理解を得られる人物を提示するよう最大限の努力をすべきです。


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