2008年2月2日(土)「しんぶん赤旗」
兼松「コース別人事」高裁判決
男女賃金差別 初の認定
契約形態理由の格差にも影響
解説
「コース別人事」雇用における男女間の賃金格差は女性差別である―東京高裁が一月三十一日、総合商社兼松の女性への賃金差別の是正を求めた控訴審で、六人の原告のうち四人の訴えを認める判決を出しました。
判決は、女性社員が男性と同じ内容で困難な職務をしていたことをあげ、「男性と大きな賃金格差があったことに合理的な理由はなく、性の違いによって差別した」とのべ、「男女同一賃金を定めた労働基準法四条に反する」とその違法性を認めました。
二〇〇三年十一月、東京地裁で出された「男女間の賃金格差は配置等の差別の結果生じたもので、男女賃金差別ではない」との判断をくつがえすものです。
男女雇用機会均等法を受け一九八五年、同社は「コース別人事」を導入。男性は全国転勤と幹部昇進のある「一般職」、女性は勤務地限定で昇進なしの「事務職」のコース別(職掌別)賃金体系に一律に移行しました。判決は、このコース別人事制度が、同社の旧来の男女別年功序列賃金体系を「そのまま引き継いだ」ものだと指摘しました。女性の賃金は、管理職になる前の男性の二分の一にも満たないものでした。
会社側が、“一般職への転換制度があるから差別ではない”とした点についても、判決は、「転換の要件がきびしく、転換後も格付けも低い」として、形だけ変えて差別を温存するやり方は許されないことを示しました。
「コース別人事」は、男女の賃金格差を隠ぺいする手段として日本の多くの企業で導入されました。野村証券や岡谷鋼機でも「コース別人事」を理由とした男女間差別を問う訴訟が起きました。これらの訴訟の判断では、募集、配置や昇進などでの性による差別を禁止した改正雇用機会均等法第六条に反するとされました。
今回のように、男女間賃金の格差を認めてその部分の支払いを命じた判決は今回が初めてです。
同じ仕事をしていれば契約形態の違いを理由にした賃金格差は認められないとした点でも、性の違いだけでなく契約形態の違う労働者間の格差を判定する上で影響をあたえるものです。
国連女性差別撤廃委員会やILO(国際労働機関)は、日本企業のコース別人事処遇は男女差別の隠れみのであると批判してきました。均等法も〇六年の改定で、部分的ですが、「間接差別の禁止」を盛りこみました。
原告たちは報告集会で、「同じ苦しみを味わって働いている人たちが、少しでもいい環境で働いていくための第一歩になれば」と語りました。この思いにこたえる政府の施策や法整備が求められています。(川田博子)
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