2008年1月31日(木)「しんぶん赤旗」
主張
公立病院
統廃合やめ命と健康を守れ
全国的に医師が不足し、産科、小児科など診療科目の廃止や病棟の休止、はては病院自体がなくなるなど、大きな社会問題になっています。
こうした「医療崩壊」が全国各地に広がりながら、政府が公立病院などの統合・廃止・縮小をすすめていることは重大です。
病院を脅かす国の失政
公的医療機関は、民間病院ではできない不採算部門の僻地(へきち)医療や救急・救命、感染症治療、災害医療など重要な部門を担っています。そのうち全国で千六十、全病床の15・4%を占める自治体病院は、地域に深く密着しており、住民が健康で安心して暮らし、住みつづけられるまちづくりにとって欠かせません。
病院はいま、医師不足と赤字経営で、その維持・存続さえ困難な状況に追い込まれています。なかでも自治体病院は、全体の六―七割が経営が立ち行かなくなっています。過去五年間で、統合・廃止された自治体病院は十、民間移譲された病院は十八にも及んでいます。(二〇〇七年四月、全国自治体病院協議会調査)
自治体病院の経営難の大きな原因は、政府・与党が「構造改革」の名で、住民生活に直結する暮らしや福祉、社会保障予算の削減を強行してきたことにあります。社会保障費は毎年、二千二百億円も削減されつづけています。
社会保障予算が削られ、公的医療費が抑制されるもとで、患者の医療費負担が増やされ、受診が抑制されています。医療機関に支払われる診療報酬も連続して引き下げられています。さらに自治体病院にたいする普通交付税の財政措置が大幅に切り下げられたことが、病院の経営悪化を加速させています。
夕張市(北海道)の財政破たんが問題になって以後、昨年六月成立の「財政健全化法」は、病院を含む地方公営企業の債務を自治体本体の債務と連結して評価するようにしました。連結によって病院事業が最も赤字額が大きいということで、病院の閉鎖や民間移譲などの広がりが懸念されます。
ところが政府は、これだけ公立病院の経営を悪化させ、全国各地に深刻な「医療崩壊」をもたらしながら、効率最優先、赤字を理由にした公立病院の大規模な統合・廃止・縮小をいっそう推進しようとしています。
日本共産党の市田忠義書記局長が二十三日の参院代表質問で厳しく批判したように、「医療崩壊」は政府の失政であり、公立病院を統合・廃止・縮小するなどは、本末転倒です。
社会保障費の抑制路線が深刻な矛盾を生んでいることは、厚労大臣を務めた自民党の尾辻秀久参院議員会長でさえ、二十二日の代表質問で「社会保障費を削るのは限界。〇九年度は削減するな」とのべたほどです。
政府は、公立病院や診療科を減らす計画を自治体に押し付けるのはやめるべきです。国と自治体が地域医療を守る責任を果たし、公立病院が産科や小児科、救急医療などを守る先頭に立つことが求められています。公的医療費の確保と診療報酬の抜本的な見直しは欠かせません。
公立病院の充実こそ
「医師たちがものすごい激務をこなしているのに、国は放置し、経営一辺倒で地方にしわ寄せするのはおかしい」(北海道標茶町長)など、自治体と住民、医療関係者らがいま、力を合わせて公立病院の存続運動に立ち上がっています。
政府は、国民の命と健康を守る切実な声にこたえ、公的医療の充実をこそはかるべきです。
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