2007年12月13日(木)「しんぶん赤旗」
海自、業者と懇親会
装備品調達の艦船補給処
250社参加で大規模に
横須賀
軍需商社からの接待の見返りに便宜供与を図ったとして収賄容疑で防衛省前事務次官が逮捕され、自衛隊と納入業者の癒着が問題になっているさなか、海上自衛隊全体の護衛艦や潜水艦などの補修、武器、装備品を調達している「海上自衛隊艦船補給処」(神奈川県横須賀市)が、納入業者と飲酒を伴う大規模な懇親会を開いていたことが本紙の調べで分かりました。(軍事利権取材班)
癒着問題さなか
懇親会が開かれたのは十日、会場は横須賀市の「よこすか平安閣」。午後三時からの納入方式の変更などを伝える「調達調整連絡会」に引き続いて、午後五時から宴会場で開催。納入業者(二百五十社)と自衛隊員ら約五百人が参加しました。
補給処関係者によると「これほど大規模な懇親会は初めて」という異例の催しです。
取材班は宴会場前で懇親会担当の森田博之・海上自衛隊補給処総務班長(一等海尉)に懇親会の趣旨をただしました。
森田班長は、懇親会について「日ごろ、交友のある納入業者がせっかく集まったので会議後に補給処の創立九周年でもあり懇親会を計画した」と説明しました。
納入業者、自衛隊員もそれぞれ五千円会費で、「自衛隊員倫理規程に反しない」(同)と強調。懇親会会場内の写真撮影などの取材申し入れには、「補給処長のあいさつもなく、ただの立食形式のパーティーなので」と拒否しました。
肩や袖に金色の階級章をつけた制服姿の幹部自衛官が懇親会場の廊下に並び、次々に名刺を差し出してあいさつする納入業者と談笑。業者同士も名刺交換し、さかんに情報交換していました。
「調達調整連絡会」の趣旨について、自衛隊側は、前防衛事務次官の逮捕までに発展した軍需商社など軍需産業との癒着問題を是正するとして、調達方式の変更を納入業者に通知するために開催したとしています。
それなのに納入業者となぜ宴会を―。
納入業者との節度をこえた関係は、青森県で航空自衛隊車力分屯基地の基地司令ら幹部が、納入業者が開いた宴席に参加していたことが発覚したばかりです。
艦船補給処の調達費は巨額です。その大半が防衛省幹部や幹部自衛官が「天下り」している大手兵器・軍需メーカーによる「随意契約」。前防衛事務次官との癒着が明らかになっている軍需商社、山田洋行が納入したホバークラフト型上陸用舟艇をめぐる水増し疑惑も問題になっています。
海上自衛隊の元幹部は「契約変更はこうした癒着構造を改めるのが目的のはず。その会議を利用して、飲酒を伴う業者との懇親会がなぜ必要なのか」と指摘し、自らの経験をこう語りました。
「業者は仕事を取りたいので招待状や開催通知があれば絶対に義理を欠くようなことはしない。顔を出せなければ祝い金を送金してくる業者がいる。業者との癒着が問題になっているのだからきぜんとしてほしい」
防衛省は「会合が開かれたことは承知しているが、問題点が明らかではないのでコメントはさし控えたい」としています。
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