2007年11月29日(木)「しんぶん赤旗」
主張
守屋前次官逮捕
軍事利権の全ぼうを解明せよ
軍需専門商社「山田洋行」から過剰な接待を受けていた守屋武昌前防衛事務次官が、収賄の疑いで逮捕されました。東京地検特捜部が、先に業務上横領などの疑いで逮捕していた「山田洋行」元専務の宮崎元伸容疑者らを新たに贈賄の疑いで逮捕、守屋前次官についても収賄容疑で逮捕したものです。
守屋前次官への過剰接待がきっかけになった軍事利権疑惑は、ついに汚職事件へと発展しました。疑惑の解明をさらに進め、歴代防衛庁長官経験者など政治家とのかかわりや、「山田洋行」以外の軍需企業からの働きかけなど、政軍財の軍事利権の全体を明らかにすべきです。
底の知れない癒着の構造
守屋容疑者が、宮崎容疑者を通じ「山田洋行」から受けたゴルフや飲食などの接待や贈り物、現金などの受け渡しは巨額で、その癒着は底知れぬものがあります。長期にわたった接待ゴルフだけで、数百万から一千万円を超すというのです。通常の付き合いとしては異常きわまるもので、四年余りにわたって防衛次官を務め「天皇」とまで呼ばれた守屋容疑者が、その見返りに「山田洋行」に便宜を図った疑惑は濃厚です。
東京地検特捜部は逮捕にあたって、守屋容疑者に提供されたゴルフ旅行など十二回計約三百八十九万円相当を「わいろ」と認定しました。
「山田洋行」と守屋前次官をめぐっては、「山田洋行」が装備品納入のさい価格を水増し請求したのを守屋容疑者がもみ消した疑惑、航空自衛隊の次期輸送機(CX)や海上自衛隊の新型護衛艦のエンジンの選定や納入で守屋容疑者が「山田洋行」に便宜を図った疑惑などが指摘されています。宮崎容疑者が「山田洋行」をやめ「日本ミライズ」を立ち上げたあとは、引き続きアメリカの軍需メーカーGE社の代理店となり、CXのエンジンが防衛省から受注できるよう働きかけた疑惑もあります。いずれも重大であり、すべての疑惑は徹底して解明されるべきです。
同時に、ことは守屋容疑者の個人的な犯罪にとどまりません。「山田洋行」は守屋容疑者だけでなく、自衛隊制服組を含め、広範な防衛庁関係者に接待攻勢を続けてきたといわれます。現職、OBを問わず、癒着の実態とその責任は、徹底的に明らかにされる必要があります。
とりわけ重大なのは政治家とのかかわりです。守屋容疑者は参院の証人喚問で、宴席に同席したことのある政治家として、額賀福志郎元防衛庁長官・現財務相と、久間章生元防衛相の名前をあげました。本紙の調べによれば、「山田洋行」から政治献金を受け取ったことのある政治家は、十七人に上っています。これらの政治家が接待や政治献金と引き換えに、「山田洋行」のために自らの職務権限を行使したことはなかったのか。疑惑を抱かれる政治家は、みずからすすんで事実を国民の前に明らかにする責任があります。
疑惑の根を断ち切るまで
「山田洋行」をめぐる疑惑は、政軍財が絡む軍事利権疑惑の、あくまで「氷山の一角」にすぎません。日米軍事同盟のもと「聖域」化した巨額の軍事費と、それにたかる日米の軍需大企業、高級官僚、政治家による癒着が疑惑の温床です。守屋容疑者の証言では、日米の軍事利権のフィクサーといわれる秋山直紀「日米平和・文化交流協会」常勤理事らの名前も登場しました。
いまこそ軍事利権の全ぼうを明らかにし、疑惑の根を断ち切る好機です。徹底追及が求められます。