2007年10月31日(水)「しんぶん赤旗」
「給油」でテロなくせるか
軍事作戦、解決の障害
笠井議員迫る
衆院テロ特別委員会での日本共産党の笠井亮議員の追及(三十日)は、海上自衛隊のインド洋での給油活動が、まぎれもなく米主導の「対テロ報復戦争」への支援であり、テロ根絶のためには、戦争支援から政治的解決のための外交努力への切り替えこそが求められていることを浮き彫りにしました。
「海上阻止活動だけ」というが
政府、根拠を示せず
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政府は、現行テロ特措法に基づいて海自が給油した燃料は、イラク作戦には使われていないとし、新法案による支援対象は、テロリストなどの拡散を海上で防ぐ海上阻止活動だけだと説明しています。
しかし、米軍の活動の実態はどうか。笠井氏が取り上げたのは、この点でした。
笠井氏が示したのは、空母を中心とした空母打撃群と強襲揚陸艦を中心とした遠征打撃群の派兵日程です。最近三年半をみても、米軍はインド洋に二十三もの艦隊を切れ目なく送り込んでいます。
海自が給油している米第五艦隊の幹部は「われわれは、いま、三つの戦争(イラク作戦、アフガニスタン作戦、海上阻止活動を含む海上作戦)に従事している」と強調しています。
笠井氏は、海自が給油してきた米艦隊が、そうした三つの任務を持っていることを知っているのかと追及。何度ただしても、石破茂防衛相は「法律にのっとって(油が)使われているかは明らかにしなければならない」と述べるばかりで、補給相手の任務を知っていたのかさえ答えません。
さらに笠井氏は具体例として、米海軍佐世保基地を母港とする強襲揚陸艦エセックスを中心とした部隊を挙げました。
エセックスは、二〇〇四年八月に沖縄で海兵隊部隊を搭載し、出撃。その準備作業のなかで、同艦搭載用ヘリが沖縄国際大学に墜落する事故まで起きています。
当時、外務省は「(エセックスは)海兵隊とともにイラクに輸送するために(沖縄の米軍基地に)入港した」と説明していました。
実際にエセックス遠征打撃群は、ペルシャ湾でイラク石油基地防衛などを行い、乗り組んだ海兵隊部隊は、数千人ともいわれるイラク市民を殺害したファルージャ攻撃にも参加しています。
この遠征打撃群の揚陸艦ジュノーにも海自の補給艦「ましゅう」は二回、給油していますが、笠井氏は直後にイラク作戦と海上活動を実施していることを明らかにしました。しかし、政府は「給油した燃料はOEF―MIO(「不朽の自由作戦」―海上阻止活動)に使用された」としてきました。
笠井氏 米側に、いつ、だれが、どういう形で確認したのか。
高見沢将林・防衛省運用企画局長 時間を要するが、それ(調査)をやっている。いずれ国会に説明する。
笠井氏が、どんなにただしても、当時、説明した根拠を何も示すことができません。
ついに石破防衛相は「いつ、どこで、だれが、どのようにということまで明らかにできるかについての知識をもちあわせていない」と述べ、答弁不能に陥りました。
笠井氏は、補給するたびに確認をしていれば、資料はすぐ出るはずだと強調し、「これまで確認せずにやっていたと思われても仕方がない」と批判しました。
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笠井氏は「三つの作戦を一体に遂行し、イラクやアフガニスタンで多数の民間人の命を奪っている部隊に引き続き給油していくというのが、新法案だ」と批判しました。
政府が“海自が撤退したら、世界から孤立する”と主張している問題も、笠井氏は、世界の百九十二カ国・地域のうち、米主導のアフガニスタン作戦や、海上阻止行動などに参加している国がごく少数にすぎないことをパネル(図)で提示。政府の主張が成り立たないことを明らかにしました。
報復戦争で事態悪化
アフガンも和平模索
次に笠井氏がとりあげたのは、報復戦争でテロがなくなるどころか、事態の悪化をもたらしているという現実でした。
アフガニスタンのカルザイ大統領は、「平和と和解のプロセス」が進んでいるとし、タリバンとの間で接触していることを明らかにしています。同氏とともに九月二十三日に記者会見した国連の潘基文事務総長も「国内の和解のための包括的な政治的対話の推進」を呼びかけています。
笠井氏 報復戦争、タリバンなどへの掃討作戦―。こうした政治的プロセスの障害になっていることは中止すべきだ。
福田首相 (アフガニスタンで)国内和平プロセスを推進していく決意を表明している点は、(笠井)委員の考えと同じように重要だ。
「平和と和解のプロセス」の重要性を認めながらも福田首相は「給油活動を止める判断の時期にいたっていない。継続すべきだ」とも答弁しました。
笠井氏は、アフガニスタン上院も、米軍などによる掃討作戦の中止を求める決議をあげていることを示し、「日本政府は9・11テロ直後から思考が止まっているのではないか。アフガニスタンの現実より、アメリカを優先するというのは、それこそ世界から孤立する道だ」と批判しました。
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