2007年10月30日(火)「しんぶん赤旗」

主張

守屋氏喚問

疑惑はいっそう深まった


 国会は、守屋武昌前防衛事務次官を証人喚問しました。

 焦点はインド洋での海上自衛隊補給艦による米艦への給油量隠ぺい問題、軍需関係商社による守屋氏への過剰接待と口利き疑惑などです。守屋氏は証言で「記憶にない」を連発し、のらりくらりとかわす態度をとりましたが、接待での複数の政治家の同席を認めるなど新事実も明らかになりました。疑惑は深く、解明は緒についたばかりです。

「政軍財」癒着くっきり

 軍需商社・山田洋行の元専務による過剰接待では、守屋氏は元専務とのつきあいが二十三年前に始まり、ゴルフ接待は十二年間に二百回以上になること、賭けマージャンや飲食接待、夫人への贈り物などただならぬ関係であったことを認めました。

 元専務は、防衛庁(現防衛省)に深く食い込むことで、専門商社の山田洋行を、大手と肩をならべる防衛庁のAランク納入業者に仕立てた実力者です。その「営業力」の源泉は、長年かけて築いた防衛庁人脈であり、とりわけ守屋氏との関係でした。

 守屋氏は「長年の友人に甘えてしまった」と弁明しましたが、そんなきれいごとではすまされないほど、癒着は根深いものです。

 問題は過剰接待の見返りの口利きです。山田洋行が一九九八年に防衛庁への装備品納入で多額の水増し請求をしながら処分を免れた問題、自衛隊の次期輸送機のエンジン納入で元専務が山田洋行から独立した会社で受注しようとしたのではないかという疑惑に、守屋氏は「一切ない」と口を閉ざします。疑惑は、米国の巨大軍事産業ゼネラル・エレクトリック(GE)も絡む重大疑獄の様相を呈しています。

 政治家の関与も浮かびました。日本共産党の赤嶺政賢議員の尋問に、守屋氏は元専務の飲食接待の場で複数の政治家と同席したこと、そのなかには防衛庁長官経験者も含まれていることを認めました。巨大な軍事利権をめぐる「政・軍・財」の癒着構造が浮き彫りにされてきました。軍需企業と自衛隊・防衛省幹部、防衛族議員らが相互にどんな関係を築いていたのかを解明するのは、国政の重大課題です。

 給油量隠ぺい問題でも、米空母キティホーク艦長が自衛隊から八十万ガロンの給油を受け、イラク戦に使ったと発言した転用疑惑をめぐり、守屋氏が在日米大使館公使に「テロ特措法の範囲内で使っていることをはっきりさせてほしい」と依頼し、事実を確かめるためではなく、口裏を合わせるために働きかけていたことが明らかになりました。

 赤嶺氏が指摘したように、二十万ガロンと八十万ガロンを取り違えたいいわけも国民の批判を抑えるためにウソを承知で押し通した疑いがいっそう濃くなりました。守屋氏は「覚えていない」とくりかえしましたが、こんな言い逃れが通用するものではありません。自衛隊の給油活動を延長する新テロ特別措置法を議論する前提が完全に崩れているのは明らかです。

「新テロ法」の前提崩れた

 自民党は「(喚問で)国民に留飲を下げさせようという気持ちで、もっと大きな国益の議論を遅らせるのは困る」(伊吹文明幹事長)と、一連の疑惑解明と切り離し、新テロ特措法を押し通す構えですが、とんでもありません。国民は、自衛隊の活動についてニセ情報を流した政府の責任、腐りきった政軍財癒着の闇を晴らすことを求めています。

 守屋氏をめぐる疑惑解明に国会は引き続き重い責任を負っています。


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