2007年10月24日(水)「しんぶん赤旗」
海自の給油量隠ぺい問題
答弁関与の守屋氏喚問を
全容解明は不可欠
海上自衛隊が米補給艦への給油量を隠ぺいしていた問題で、当時、防衛局長を務めていた守屋武昌前防衛事務次官らの証人喚問と、海自の活動の全容を明らかにすることが、新テロ特措法案を審議するうえで、必要不可欠のものになっています。
政府が許す
日本共産党の赤嶺政賢議員は二十三日の衆院本会議で「政府が自衛隊による隠ぺいを許したことが重大だ」と追及しました。
隠ぺい問題とは、海自補給艦「ときわ」が二〇〇三年二月に米補給艦ペコスに給油した量が約八十万ガロンだと海上幕僚監部の防衛課長が知りながら、政府が、約二十万ガロンだとの説明をしてきたというものです。
偽りの説明は、今年九月に市民団体が、米軍資料をもとに、給油量が約八十万ガロンだったと指摘するまで続きました。
それでも石破茂防衛相は「改ざんなどというものはいたしておりません」(十日の衆院予算委員会)と明言していました。ところが、わずか十二日後に、厳しく追及していた野党に提出した調査報告書のなかで、〇三年の段階から隠ぺいし続けてきたことが明らかになったのです。
重大なのは、隠ぺいしようとした給油量の問題は、海自によって給油された油がイラク戦争に使われていないとする政府の根拠だったということです。イラク戦争への使用は、テロ特措法への明確な違反です。
米補給艦は、海自からの給油直後に、イラク戦争に参加した米空母キティホークに給油しています。政府は、給油量が約二十万ガロンだということを挙げて、“油は瞬間的に消費されたので、イラク戦争には使われていない”と説明してきました。
この経過が示しているのは、外部から指摘がない限り、都合の悪い海自の活動実態は、国民にも国会にも隠し続けるという政府・防衛省の深刻な隠ぺい体質です。
「遺憾」なら
それでも防衛省の報告書は、もっぱら報告をしなかった海幕防衛課長の責任を強調しています。
しかし、赤嶺氏が指摘したように、担当者の責任で済まされる問題ではありません。政府が、こうした自衛隊の暴走へのチェックがまるでできていないことを示しています。
赤嶺氏の批判に、福田康夫首相も「シビリアンコントロール(文民統制)の観点からも問題であり、遺憾だ」と述べざるをえませんでした。
そういう認識があれば、政府は、今からでも海自の活動実態についての資料を提出すべきです。
また偽りの応答要領を作成していたのは、防衛省の防衛局防衛政策課でした。その責任者は、防衛局長だった守屋氏です。海自の活動実態とともに、同氏が国会で真実を明らかにすることは、新テロ特措法案の徹底した審議のために必要不可欠です。
こうした当然の要求にも応えず、新法案について“アフガニスタン空爆への支援はしない”“イラク戦争への支援もしていない”と、政府がどんなに強調しても、なんの説得力もありません。(田中一郎)
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