2007年9月3日(月)「しんぶん赤旗」

主張

「ネットカフェ難民」

実態ふまえ緊急・抜本対策を


 ネットカフェや漫画喫茶で寝泊まりし、不安定な就労を繰り返す「ネットカフェ難民」と呼ばれる人たちの深刻な実態が明らかになり、緊急・抜本対策を求める声が広がっています。厚生労働省が八月二十八日公表した「ネットカフェ難民」に関する全国調査によると、「難民」と言われる人は全国で約五千四百人(推計)に及びます。その半数が日雇いの派遣や短期雇用など非正規労働者で、失業者や無業者も四割に達しています。二十歳代(26・5%)と五十歳代(23・1%)が多くいました。調査対象は限られており、実際はこれ以上にのぼるとみられています。

根本原因は雇用の破壊

 日雇い派遣など低賃金で不安定な雇用は、ワーキングプア(働く貧困層)の原因となっています。「ネットカフェ難民」は、その深刻な実態を浮き彫りにするものです。日本共産党は早くからこの問題を重視してきました。小池晃参院議員は「ネットカフェ難民」の独自調査にもとづき、国会で再三取り上げ、政府に全国的な実態調査と緊急対策を求めてきました。

 厚労省が発表した今回の全国実態調査では、住居を失い定住できなくなった主な原因は、仕事を失ったことによるものが最も多く、「家賃等を支払えなくなった」(東京32・6%、大阪17・1%)、「仕事を辞めて寮や住み込み先を出た」(東京20・1%、大阪43・9%)が高くなっています。不安定な雇用が「ネットカフェ難民」を生む最大の原因です。

 定住できなくなった人へのアンケート調査では、非正規労働者の平均手取り月収が東京で十一万三千円、うち日雇い派遣は十二万八千円。同時におこなった事業主(十社)を通じた調査では、一カ月未満の短期派遣労働者は五万三千人、うち日雇い派遣が五万一千人と大半を占め、平均月収は十三万三千円でした。

 自らすすんで「ネットカフェ難民」になる人などいません。保証人も得られず、まとまった金がないためアパートも借りることができません。自炊もできないネットカフェ暮らしは予想以上に出費を強いられ、自立を準備する蓄えもできません。社会保険も労災保険も雇用保険もありません。「枕をして布団の上で寝たい」というささやかな願いもかなわずに放置されたままです。非人間的な生活から脱出したくても、もはや個人の力と努力だけでは抜け出せない悪循環に追いやられているのです。

 政府は財界の要求にこたえて、安くて必要なときに必要なだけ労働者を使うことのできる雇用形態をつくりあげてきました。そのきっかけになったのが労働者派遣の自由化です。一九八六年の労働者派遣法施行で、雇用主と実際の使用者が異なる「間接雇用」を認め、派遣労働が合法化されました。また九九年には派遣労働が原則自由化され、日雇い派遣が急増していきました。

 「ネットカフェ難民」にみられる深刻な貧困の打開は一刻の猶予も許されません。そのためにはこうした雇用破壊にメスを入れ、人間らしく働けるルールを確立すべきです。

住宅の確保を最優先に

 安倍・自公政権は先の参院選で、貧困と格差を拡大している弱肉強食の「構造改革」路線への厳しい審判を受けました。国は労働法制を改悪して働くルールを壊すのではなく、雇用機会の創出と常用雇用化の実現に力を入れるべきです。まず「難民」への住宅の確保、低家賃で入れる支援策、派遣業法の抜本改正による日雇い型派遣をなくすことです。



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