2007年8月23日(木)「しんぶん赤旗」
主張
沖縄新基地アセス
県民の反対、力で押し切るか
政府が沖縄の米軍新基地建設に向けて環境影響評価法にもとづく手続きに入ったことから、県民の怒りが噴き上がっています。
新基地にはどの世論調査でも七割もの県民が反対し、沖縄県や名護市も同意していないのに、建設に向けた手続きに入るなどあってはならないことです。「理解を得る」といいながら、強権を発動するのでは反発が広がるのは当然です。
目に余る強権姿勢
防衛省は七日、日米両政府が合意した新基地建設計画にかかる環境影響評価(アセス)の方法を示した「方法書」を沖縄県に送付し、県民に公告・縦覧をしています。初期的手続きとはいえ、二〇一四年の建設完了に向けての大きな踏み込みです。悪法を次から次へと強行採決したような暴走が参議院選挙で国民からきびしく指弾されたことも、はや忘れたかのような安倍政権の強権的手法が許されるはずはありません。
政府はこれまで「地元の理解を求める」といってきました。しかし、環境影響評価の手続きに入ったということは、安倍政権が力ずくで新基地建設を進める姿勢を一段とつよめていることを示すものです。
しかも見過ごしにできないのは「方法書」の内容です。
新基地の騒音被害は使う航空機によっても違います。米海兵隊のFA18などの戦闘機はどうなるのか、「方法書」は明記していません。墜落事故が多い垂直離着陸可能の大型輸送機オスプレイの沖縄配備は確実なのに明記していません。「米軍回転翼機及び短距離で離発着できる航空機」ですませているのは影響の大きさを隠すためなのはあきらかです。
飛行経路を示していないのはもっと重大です。住民の頭上をどう飛ぶのかは決定的問題です。アメリカだけでなく日本政府でさえも飛行経路について「どういう方向からでも着陸することはありえる」(昨年十一月七日衆院安全保障委員会、久間章生防衛庁長官=当時)と説明してきました。それなのに「方法書」は飛行経路を示していないのです。
「方法書」はあきらかに詐欺的内容となっています。このような手順で新基地建設を進めるなどとうてい認めることはできません。
新基地建設予定地周辺海域の現況調査に強力な機関砲を装備した掃海母艦を投入した手口といい、地元の意向を無視してアセス方法書を送付したやり方といい、安倍政権の強引さは目に余ります。しかも、小池百合子防衛相は、決定済みの二〇〇七年度の北部振興予算の配分についても、沖縄県が「方法書を受け取っていない」ことをあげ、「円滑に進んでいるかどうかの判断をしていきたい」とのべて予算執行の凍結をちらつかせています(七月三十一日)。
国民のしあわせに責任を負うべき政府が、こうした強権的やり方で沖縄県民を苦しめるのは絶対に許されることではありません。アメリカのために日本国民の痛みを激増させることをやめるのがまっとうな政府のとるべき態度です。
平和的生存権の擁護
沖縄県民は、沖縄戦の悲痛な体験から基地のない平和な沖縄を願っています。その県民にアメリカの戦争の足場となる新基地建設を押し付けるのは根底から間違っています。
沖縄県民の新基地建設反対のとりくみは、戦争を放棄し、国民が平和のうちに生存することを保障した憲法にもとづく大義のあるたたかいです。運動を発展させ、建設中止に追い込むことがいよいよ重要です。
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