2007年6月28日(木)「しんぶん赤旗」

消えた年金 共産党が“緊急解決法案”

納付履歴の全員送付

1年内の記録統合など


 「消えた年金」問題解決のため、全員に納付履歴を速やかに送付を―。日本共産党の小池晃政策委員長と井上さとし参院国対委員長は二十七日、国会内で記者会見し、与党提出の年金支給の時効特例法案に対する修正案として「『消えた年金』緊急解決法案」(小池氏)を発表しました。


小池・井上氏発表

写真

(写真)記者会見する小池晃政策委員長(右)、井上さとし参院国対委員長=27日、国会内

小池氏は、「時効を撤廃するだけでは確実な給付に結びつかない。政府の責務で、すべての人に本来の年金額を正しく支給するための措置を書き込む必要がある」とのべました。

 修正案に明記された政府が行うべき第一の措置は、保険料を納めた記録を受給者や加入者はもちろん、無年金者など「被保険者であった者」も含めて速やかに通知することです。

 第二は、特定されていない五千万件や未入力の千四百三十万件の年金記録も含めて、一年以内に調査を行い、該当者の記録に統合することです。

 第三は、社会保険庁の誤ったオンライン記録を手書き台帳やマイクロフィルム化された記録と突き合わせて訂正することです。これには市町村にある原簿も含まれます。

 小池氏は「自民党の中川秀直幹事長の『加入者にも納付記録を送るべきだ』という発言は重要だ。このことは私たちも当初から提案していたものだ。国民の不安にこたえるために速やかに実行すべきだ」とのべました。

 修正案では、保険料を払ったという申し出があった場合、「主張および提出した証拠並びに関係者の証言を十分にしん酌するものとする」と明記。小池氏は「すべてそろわなくても、どれかひとつでも合理的なものがあれば支給する」と強調しました。

 さらに、物証がない場合の支給の可否を判定する第三者委員会について条文に明記するとともに、同委員会が作成した「あっせん案」を尊重するものとするとして国に尊重義務を課しています。小池氏は、「今の第三者委員会は政令で定めるだけなので、法律上の根拠を設けるとともに、国が決定を尊重して年金を支給することを条文化した」とのべました。

 また「これは党派を超えて知恵を出し合い解決すべき問題だ。各党にも賛同を求めたい」と強調。そのうえで、社保庁解体・民営化法案について「この問題の解決もしないまま解体するのは最悪の責任逃れであり、廃案にすべきだ」とのべました。


「消えた年金」緊急解決法案(要綱)

 日本共産党が二十七日に発表した「『消えた年金』緊急解決法案」(時効特例法案修正案)の法案要綱は次の通りです。

 一 題名の修正

 題名を「厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付を確実に支給するための時効の特例及び年金個人情報の正確性の確保に関する法律」に改めること。

 二 目的規定の追加

 この法律は、政府が管掌する厚生年金保険事業及び国民年金事業における被保険者等の保険料に係る記録に漏れ又は誤りが多数存在することが明らかになったことにかんがみ、記録した事項の訂正に係る厚生年金保険法による保険給付又は国民年金法による給付を受ける権利について時効の特例を設けるとともに、年金個人情報の正確性を確保するために政府が講ずべき措置を定め、もって本来支給されるべき保険給付及び給付が確実に支給されるようにすることを目的とすること。

 三 政府の責務に係る修正

  見出しを「年金個人情報の正確性を確保するための措置」に改めること。

  政府は、年金個人情報を正確な内容とするよう措置を講ずるに当たり、当面講ずべき措置として、次に掲げる措置を講じなければならないものとすること。

 (1) この法律の施行後速やかに、厚生年金保険又は国民年金の被保険者、被保険者であった者及び受給権者(以下「被保険者等」という)のすべてに対し、当該被保険者等に関する年金個人情報のうち保険料の納付状況に係るものを分かりやすい形で通知すること。

 (2) この法律の施行後一年以内に、個人が特定されていないすべての年金個人情報について、個人を特定するための調査を行い、当該調査においては、当該年金個人情報に係る個人である可能性のある者に対し当該年金個人情報の内容を具体的に示して、当該年金個人情報に係る個人であるか否かを確認すること。

 (3) 電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう)に記録された年金個人情報の内容と、書面又はマイクロフィルムに記録された政府が管掌する厚生年金保険事業又は国民年金事業の運営に当たって保有されている個人情報で当該年金個人情報の基となったものの内容とを突き合わせること。

  政府は、年金個人情報を正確な内容とするよう措置を講ずるに当たり、被保険者等から厚生年金保険法による保険給付又は国民年金法による給付に関する保険料の納付等の事実の申出があったときは、その主張及び提出した証拠並びに関係者の証言を十分にしん酌するものとすること。

  政府は、審議会等(国家行政組織法第八条に規定する機関をいう)で政令で定めるものが厚生年金保険法第二十八条又は国民年金法第十四条の規定による業務に関する苦情についてのあっせん案を作成したときは、これを尊重するものとすること。

 四 日本年金機構法の一部改正規定の削除

 日本年金機構法の一部を改正する規定を削除すること。

 五 その他

 その他所要の規定の整備をすること。



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