2007年6月22日(金)「しんぶん赤旗」

ここまできた「暴走国会」


 自民、公明両党は安倍晋三首相の「指示」を受け、今国会で悪法の強行採決を繰り返し、参院選投票を一週間先送りする十二日間の会期の延長まで決めました。かつてない異常事態はなぜ起きたのか―。


首相が「実績」に固執

 下の表をみてください。与野党の合意がなかったり、質疑を「数の暴力」で一方的に打ち切って今国会で行われた強行採決の主なものです。マスメディアも「与党がこれほど多くの重要法案の採決を一方的に強行した国会がかつてあっただろうか」(「朝日」二十一日付社説)とその異常ぶりを指摘します。

 なぜ強行につぐ強行なのか。年初から問題になった閣僚の疑惑や暴言、「消えた年金」問題の発覚などで窮地に陥った安倍内閣が、参院選に向けて、「指導力」演出と「実績」づくりに固執しているためです。

 会期延長の理由は残された法案を通すため。しかし、その「目玉」とされている国家公務員法改悪案も、天下りを公然と自由化するための法案です。「実績」どころか、国民の願いとは真っ向から反する悪法でしかありません。

 そのうえ、参院選の日程まで遅らせて、年金問題のほとぼりを冷まそうという意図も込めたきわめつけの党利党略です。

 与党内からは、「(マスメディアに)『連続強行採決』とは書かせたくない」(自民・矢野哲朗参院国対委員長)との声もきかれます。

自・民の筆頭協議で

 「暴走国会」のもとで「筆頭間協議」という言葉が自民、民主両党から持ち出されています。法案審議日程などを各委員会の両党筆頭理事間で話し合うというものです。改憲手続き法の採決日程も日本共産党など少数会派の反対を無視して、この「筆頭間協議」で決められました。

 「ザル法」と批判が強い、与党提出の政治資金規正法改定案の衆院審議では、民主党が「筆頭間協議」で与党案にどんどんすりよる「再修正」の動きをみせました。「事務所費」疑惑の解明を尽くさぬまま、制度いじりで幕引きするのは与党と同じです。

 教育三法をめぐっては、民主党は政府案以上に教員の身分を不安定化させる教員免許法改悪案など「対案」を提出。採決日程には反対しましたが、現場の同党有力議員から「参院ではよい付帯決議をつけたい」との声がきかれました。

 こうした「不確かな立場」では、自公の暴走に対決できないことが浮き彫りになっています。

スジを通す共産党

 日本共産党は自公の暴走にキッパリ反対。改憲手続き法の狙いが、九条改憲にあることなど悪法の核心を指摘する論戦を展開しています。自民党の閣僚経験者の一人は「立場は別だが、共産党の質問、反対討論を聞いて唯一スジが通っていると思う」と認めるほどです。また、国会運営でも、すべての党の合意にもとづいて審議を行うよう主張しています。

 いまこそ、国民の声を受けて奮闘する「たしかな野党」が必要です。

40年ぶりの事態も

 二月には二〇〇六年度補正予算を衆院、参院を通じて、野党欠席のまま、与党だけで強行採決。一九六六年十二月の臨時国会以来、四十年ぶりの異常事態です。

 三月三日未明まで続いた二〇〇七年度予算の衆院強行採決も十八年ぶりの事態。予算に関連して予算、財金、総務の三委員会で採決を強行するという前例のないことまでやりました。

 あまりの混乱ぶりに、衆院予算委員会では、日本共産党の予算組み替え動議に、自民党議員が起立・賛成するというハプニングまで起きました。

 六月十五日の衆院財務金融委員会では、民主党も賛成する電子記録債権法案まで与党議員の二十分の質疑のみで打ち切り、野党に質問をさせず採決強行しました。


今国会の主な強行採決

 2月2日 衆院予算委員会、本会議を与党単独で開会し、2006年度補正予算を強行採決

   5日 参院予算委を与党単独で開会し、補正予算を強行採決

   6日 参院本会議を与党単独で開会し、補正予算を強行採決

 3月2日 衆院本会議、予算委、財務金融委、総務委をそれぞれ与党単独で開会し、07年度予算と関連法を強行採決

  15日 衆院憲法調査特別委で与党が改憲手続き法の中央公聴会日程を強行議決

 4月12日 与党が衆院憲法調査特別委で改憲手続き法、同安保委で在日米軍再編促進法を強行採決。翌日の本会議で両法案を強行採決、教育3法審議の特別委設置も議決

 5月11日 参院憲法特委で与党と民主党が改憲手続き法を強行採決

   14日 衆院イラク特委で与党がイラク派兵延長法を強行採決

   25日 衆院厚労委で与党が質疑を一方的に打ち切り社会保険庁解体・民営化法案を強行採決

   30日 衆院厚労委で与党が年金時効特例法案を強行採決

  6月1日 5月31日からの衆院本会議を延会し、社会保険庁解体・民営化法案と年金時効特例法案を強行採決

   13日 衆院政治倫理・公選法特別委で与党が政治資金規正法改定案を強行採決

   18日 衆院懲罰委で与党が委員会開会に同意しない民主党出身の懲罰委員長の不信任動議を可決し、懲罰内容を議決

   19日 与党が参院外交防衛委でイラク派兵延長法、文教科学委で教育3法を強行採決


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