2007年6月16日(土)「しんぶん赤旗」

主張

自衛隊の国民監視

連帯の輪を広げ中止させよう


 自衛隊の違憲・違法な国民監視活動に抗議する市民集会が日本共産党の呼びかけで開かれました。

 「監視されている怖さはもちろんだが、何が問題だと政府が開き直っていることがもっと怖い」―日本共産党の志位和夫委員長の報告と監視されていた人たちを含む参加者の告発で、違憲・違法な国民監視の実態がいよいよはっきりしてきました。自由にものがいえなかった戦前の暗黒政治の復活を許さないために、自衛隊の違憲・違法な活動は中止に追い込む以外に道はありません。

違憲・違法な活動

 監視された人たちが告発した事実は実に衝撃的です。

 イラク派兵反対の集会後のデモコースをたどったら自衛隊が記載した通りだった―参加者の証言は、情報保全隊員が尾行していたことを示しています。参加組合に案内をだしただけの地区労の旗開きでの発言が記載されていたのは、組合の内部的集まりにも情報保全隊員が潜入していたことを裏付けます。集会を監視していた人物の身元を問いただすと氏名も所属も言わず、現場から逃げ出したという報告もありました。身分を明らかにすることができないのは違法な活動だからでしょうか。

 久間章生防衛大臣は「公開の場にでかけての情報収集」だとか「尾行はしていない」などといいのがれていますが、まったくのごまかしであることがあきらかになりました。

 国会議員がイラク派遣に反対だと発言したことも、新聞記者がイラク派遣について自衛隊員に取材をしたことも、映画監督の山田洋次さんが自衛隊派兵支持の「黄色いハンカチ運動」に批判的な考えをのべたことも憲法にもとづく正当な行動です。

 情報保全隊の報告にあるように、こうした国民の活動を“敵”とみなして監視するのは憲法をふみにじるものです。消費税増税や医療制度改悪などに反対する生活擁護の運動まで監視するのは、政府批判をいっさい許さないという権力組織の怖さを示しています。

 自衛隊について政府はこれまで「政治的中立」と「文民統制」とを大原則にしてきました。歴代政府は「自衛隊が政治的中立を守るのは大事な原則」(一九七九年五月二十二日参議院内閣委、山下元利防衛庁長官=当時)といってきました。「文民統制」とは国民が自衛隊を統制することです。政府や自衛隊を批判する国民を自衛隊が監視するのはこうした原則にさえ違反するものです。久間防衛大臣のように、「どこが悪いのか」という開き直りは通用しません。

 自衛隊は強大な軍事力を持つ武力集団です。その自衛隊が身分を隠し、デモや集会にまぎれこみ、監視活動をすること自体が国民の活動への威圧です。多くの新聞が社説で「市民活動を委縮させる」と批判したのは当然です。

 ことは監視の対象にされた団体や個人だけの問題ではありません。国民すべての問題です。

「軍の暴走」許さぬために

 自衛隊の違憲・違法な国民監視は、日本を海外で「戦争をする国」にかえる安倍内閣の政策と結びついています。日本が海外で戦争にふみだすときに、自衛隊が日常的に集めた情報が戦争に反対する国民の取り締まりに使われない保障はありません。

 ここでとめなければ「軍の暴走」がエスカレートし、「とりかえしのつかない事態を招く」(志位委員長)ことになりかねません。国民の連帯の輪で違憲・違法な国民監視活動を中止に追い込みましょう。



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