2007年6月2日(土)「しんぶん赤旗」
温暖化防止 環境団体は厳しい目
目標定めるが 達成は各国任せ
米大統領が新枠組み
【ワシントン=鎌塚由美】ブッシュ米大統領は31日、地球温暖化の原因になっている温室効果ガスの削減のためとして、新たな国際的枠組みを構築する考えを明らかにしました。温室効果ガスの最大の排出国でありながら、国際的な削減の取り決めに背を向けてきたブッシュ政権の「方向転換」と評価する声もありますが、環境団体からは厳しい批判があがっています。
ブッシュ大統領は、二〇〇八年末までに、経済成長で急激に排出量を増やしている中国やインドを含む「他国とともに長期的な目標を設定する」と述べ、そのための国際会議を主催する意向を明らかにしました。
米国は排出削減目標は経済成長を阻害するとして工業先進国に一二年までの削減目標を数値で定めた国連気候変動枠組み条約の京都議定書から〇一年に脱退しています。ブッシュ大統領は、今回の提案は同条約における「米国の責任遂行を助ける」ものだと説明。京都議定書以降の枠組みの創設については、「他国と協力する」とも表明しました。
ドイツで六日から開催される主要国首脳会議(G8サミット)の主要テーマの一つが温暖化対策。サミット議長国ドイツの提案は五〇年までに排出量の一九九〇年比半減を参加者に義務付ける内容。大統領が提案した「新たな枠組み」は国際的削減目標は定めるものの、「その達成は各国が個別に約束する」(ホワイトハウスのノートン環境評議会議長)ものです。
サミット直前の今回の新提案については、「主要な妨害者だと見られないようにするため」(米NBCテレビ)との分析もあります。環境保護団体は、ブッシュ新提案に、厳しい目を向けました。
米国の「フレンズ・オブ・アース」のブラックウェルダー会長は同日、声明を発表。ブッシュ大統領の新提案を「温室効果ガスを実際に削減することなく温暖化防止に真剣に取り組んでいるかのように見せようとするもの」と指摘。「温暖化対策を本当に真剣に考えるのであれば、国連協議に復帰するか、(ドイツの)メルケル首相の考えに耳を傾けるべきだ」と強調しました。
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