2007年5月31日(木)「しんぶん赤旗」

75歳以上対象に来年4月に発足

後期高齢者医療制度って?


 来年四月から、七十五歳以上の人を対象にした後期高齢者医療制度が新たに発足します。どんな制度で、どんな問題があるのか。日本共産党政策委員会責任者の小池晃参議院議員に聞きました。


日本共産党政策委員会責任者・参議院議員 小池 晃さんに聞く

全員から保険料徴収に

■年金から天引き、月平均6200円も

写真

(写真)小池さん

 今の制度では七十五歳以上の人(後期高齢者)も国民健康保険や組合健保、政管健保に入ったまま老人保健制度の対象になっています。来年四月から老人保健制度が廃止になり、七十五歳以上は現在加入している医療保険から脱退し新たにつくられる後期高齢者医療制度に入ることになります。昨年の国会で医療制度が改悪されましたが、その一つです。

 制度発足時には費用の一割が七十五歳以上の高齢者の保険料でまかなわれます。今後、後期高齢者が増えるにしたがって、その割合も引き上げられていきます。この保険料は、七十五歳以上の全員に負担が義務づけられます。たとえば、サラリーマンの息子さんの扶養家族になっていて現行では保険料負担がない高齢者も例外ではありません。

 保険料は、全国平均で月六千二百円(応益部分が三千百円、応能部分が三千百円)、年七万四千四百円にもなります(表)。先日(十日)、私は国会で後期高齢者医療制度の保険料について、働いて高収入を得ている大企業の重役などは、かえって負担が減る不公平なものだと指摘しました。試算すると年収七百万円以下は負担増なのに、八百万円以上は負担が減りますからね。厚生労働省も「ありうる」と認めました。たとえば日本経団連の奥田前会長は来年七十五歳ですが、こうした人は負担がうんと減る可能性があるのです。

 年金を月一万五千円以上受けていれば、保険料が年金から天引きされることも重大です。厚生年金の平均的受給者でみると、介護保険料との合計で約一万円が天引きされます。

 これに便乗して来年四月から、六十五歳以上の国民健康保険加入者の保険料も年金から天引きされます。

■医療の抑制をねらって

 なぜこの制度をつくる必要があるのか。政府は「負担と給付を明確にするため」と説明します。高齢者に保険料の痛みを実感させると同時に、現役世代にも負担感を実感させようということです。

 現行では、若い世代の医療保険からどれだけ高齢者医療にまわったか分かりません。

 しかし、来年度から後期高齢者医療に入る保険料と、自分たちに使われる保険料がきっちり分けられ、給与明細などに明記される。その割合は、およそ一対一だろうといわれています。

 するとどうなるか。高齢者医療もお金がかかりすぎるから縮小・抑制・自粛させようという圧力が働く。すでに介護保険でも実証済みで、保険料が高くなるから、できるだけ介護サービスの利用をやめようという制限が強められていますよね。

■診療報酬も別建てに

 新制度では、後期高齢者の診療報酬も、七十四歳以下と別建てになります。「高齢者の心身の特性」にふさわしい報酬にするというのが政府の言い分ですが、それなら、いろいろな病気を複合的にもっている高齢者が元気にすごせるよう、医療に手間も、お金もかけることこそ必要です。

 ところが、政府は逆に、“高齢者は複数の医療機関を受診し、検査や投薬が重なる傾向があるから、それをただせ”というのです。高齢者の検査や治療の報酬を定額にし、手厚い治療をした医療機関ほど減収にすることが検討されています。これでは、必要な検査や治療ができなくなる恐れがあります。

 国会審議でも、高齢者の健康や希望より、医療にたいする国の予算を減らすことを最優先に「在宅看取(みと)りの推進」などが議論されています。高齢者の人権をまもり、最高で最善の医療を提供するという考え方はそこにはありません。

 「高齢者の心身の特性等にふさわしい診療報酬」は、医療改悪法が成立したときの付帯決議にも書きこまれました。日本共産党は反対しましたが、自民・公明はもちろん民主党も社民党も賛成しています。

 このように問題点の多い後期高齢者医療制度ですから、このまま実施させるわけにはいきません。制度の根本的な見直しを求めていきたいと思います。

表


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