2007年5月19日(土)「しんぶん赤旗」
教育3法案に対する
石井議員の反対討論
衆院本会議
十八日の衆院本会議で行われた教育三法案に対する日本共産党の石井郁子議員の反対討論は次のとおりです。
三法案は、改悪教育基本法の具体化をはかり、わが国の教育制度を根本から転換し国の関与と統制を強化するもので、憲法と教育の条理に反するものといわざるをえません。しかも、これら三法案は、安倍内閣による昨年末の教育基本法の強行成立以来、教育再生会議、中央教育審議会における異常ともいえるスピード審議を経て国会に提出されたものです。徹底審議・慎重審議が求められていたのは当然です。公聴会でも、参考人質疑でも、政府案に対する批判・疑問が相次ぎました。法案をめぐって解明すべき課題が山積しているのに、特別委員会で採決を強行したことに断固抗議するものです。
三法案の審議で浮かび上がったのは、改悪教育基本法をうけて、教育に対する国家統制の強化をはかり、これまで以上に教育現場を委縮させ、さらなる困難を押し付けるというものでした。
法案は、「規範意識」や「我が国と郷土を愛する態度」など多くの徳目を義務教育の目標として掲げ、その達成を義務付けています。これは国が特定の価値観を子どもたちに強制し、憲法に保障された内心の自由を侵害することになります。子どもたちを特定の鋳型にはめこむ徳目の押し付けはやってはなりません。
現に、いわゆる「靖国史観」を学校現場にもちこむ動きがありますが、「愛国心」の強制がこうした動きに拍車をかける危険を指摘せざるをえません。
また、法案は教員組織を大きく変え、これまでの校長、教頭、教諭という組織から、校長、副校長、主幹教諭、指導教諭、それに教諭というまさに職階による上意下達の体制としています。これは、上からの統制を強化するものです。既に実施されているところでは、教員の自主性・同僚性が奪われ、教員のチームワークややる気を奪っていることも明らかとなっています。
教員の切実な願いは「もっと子どもたちと向き合える時間がほしい。子どもたちのために授業準備がしたい」というものです。こうした声にこたえることなく、導入される免許更新制による官製研修の押し付けは、教員の資質向上につながらないばかりか、教員自身の自主研修を困難にするものです。
十年で教員の免許が切れるというやり方は身分の安定と保障を求めたILO・ユネスコの「教員の地位に関する勧告」に反します。指導力不足教員の「厳格化」も教員への圧力となりかねず、教員の活動を委縮させるものです。
いまやるべきは多くの参考人が求めた、教職員の多忙化解消のための増員であり、少人数学級の実現ではありませんか。
また、教育委員会への国・文部科学省の権限強化は、教育の地方分権・地方自治の原則に反するものです。これまで未履修問題やいじめ問題などを理由に、教育委員会に対する「是正の要求」を設けたと説明してきましたが、審議を通じて「日の丸・君が代」の実施もその対象となることが明らかとなりました。これでは学習指導要領や教育振興基本計画の強制の手段に使われかねません。
三法案は憲法の原則と大きく矛盾するものです。このような悪法は廃案以外にありません。
日本共産党は、憲法にもとづいて子ども一人ひとりを大切にする教育を実現するため、国民のみなさんと力をあわせて奮闘する決意をのべ、討論とします。