2007年3月9日(金)「しんぶん赤旗」
国会の視点
改憲手続き法案 与党に抗議殺到
矛盾深め強行できず
自民、公明両党が九条改憲に直結する改憲手続き法案の公聴会の設定を強行できなかったことは、安倍晋三首相が改憲に向けた強硬路線をとればとるほど、国民との矛盾を深めざるをえないことを示すものです。
今国会での法案審議が始まる前から「二十二日委員会採決、二十三日衆院通過」の日程が報道されると、衆院憲法調査特別委の理事・委員の事務所には、連日抗議や要請のファクス、電話がひっきりなしに入りました。ある委員の事務所では「セットした五百枚の用紙の束が切れた」との声も聞かれました。
こうしたなか日本共産党の笠井亮衆院議員は八日朝の理事会でも、職権開催と採決を前提とした公聴会設定に厳しく抗議。民主、社民は理事会を欠席しました。
公明党の漆原良夫国対委員長も、自民党の二階俊博国対委員長と会談し、「職権で(委員会を開き)公聴会を議決するのはいかがか」と慎重対応を要求。特別委の中山太郎委員長も「与野党がばらばらだと国民に不安を与える」と、職権で決めた委員会の開催を見送らざるをえませんでした。
同特別委員会では、昨年五月にそれぞれ法案を提出した与党と民主党との間で、法案の「修正」が論議されてきましたが、現に提出されているのは原案だけです。「修正」案もできないうちに公聴会で国民に何を聞こうというのか、まったく道理がありません。
与党が八日の理事会で示した公聴会の開催案もわずか三時間で、各党推薦枠の公述人が五人でるだけ。一部野党の推薦枠ははずし、公述人の一般公募もありません。「三月中の衆院通過」の環境を整えるための形式的なものといわざるをえません。
公聴会とは、そもそも国民の意見を聞いてそれを国会での審議に生かすためのものです。まして、憲法に直結する重大な法案です。公聴会を開くにしても、一回にとどまらず、全国各地で開催し、幅広く国民各層から意見を聞くのが当然です。しかし、与党は、採決を前提とした公聴会を形式的に開き、法案を強行しようとしているのです。この姿勢は二重三重に許されません。
与党が、ここまで強行姿勢を示した背景には、五月三日までの法案成立を指示した安倍首相の意思があります。首相は、七日も「自民党の中に、象徴的に憲法記念日までに成立させることが大切だという気持ちがあるのは当然だ」とはっぱをかけました。
与党内からは、公聴会を一週間ずらして、今月末に衆院通過をねらう動きがささやかれています。
世界に誇る憲法の施行六十周年の記念日を、改憲のための節目にしようなどという安倍首相のたくらみは許されません。(藤原直)