2007年2月26日(月)「しんぶん赤旗」

障害乳幼児の親の思い

自立支援法は発達権侵害


 「障害者自立支援法で、多くの障害乳幼児が必要な支援を受ける機会を奪われている」。幼い障害児の親や施設の職員らでつくる「障害乳幼児の療育に応益負担を持ち込ませない会」は同法の見直しを求めて、東京都内で集会(十八日)と要請行動(十九日)をしました。行動に参加した親たちや施設職員の思いを聞きました。(平井真帆)


 昨年四月、障害者自立支援法が施行され、利用量に応じて利用者の負担が重くなる「応益負担」が導入され、現場ではさまざまな問題が起きています。

 同法の下では、施設で食べる給食費も実費負担になりました。施設により差はありますが、国基準は一食六百五十円かかります。母親たちからは「保育園の保育料には給食費も含まれているのに、なぜ障害児の施設は別に払わなければならないのか。納得できない」という声が聞かれました。

 自閉症の子どもを二歳のときから施設に通わせている東京都内の母親は「家でも偏食がひどく、一年目は園に行っても何も食べずに帰ってきた。二年、三年とかけて、だんだん偏食が少なくなり、食べられるようになった」と振り返り、障害児にとって「食事は本当に大事なもの。実費負担はやめてほしい」と訴えていました。自閉症を抱える子どもは「白いご飯だけ三杯食べてしまう」など、食事に関する苦労も多いといいます。

 障害児施設職員は、子どもたちに食べさせる経験と知恵を持っており、施設は食事の習慣を身につける場でもあります。しかし、障害乳幼児が通える施設数が少ないため、通所に長時間かかるなど大変な現状にあり、親たちにとって施設の増設は切実な要求です。

 東京都内の自閉症児の母親は「障害を持つ子どもを施設に通わせるのに片道一時間かかる。そのため小学校にあがる上の子を学童に預けたいが、『学童は働いている人のためにある』と言われた。去年までは働いていたが、障害児がいるために働けなくなった」と話していました。

 一方、施設のなかには、同法施行後、家庭の負担が増えて利用者が減ったり、国から支払われる報酬が下がったりしたため、経営が悪化し閉鎖に追い込まれるところが増えています。鹿児島県で乳幼児の児童デイサービスを営む園長は同法施行後、「離島では利用料が上がったため、利用者がゼロになり休園する施設もある」と訴えました。

 広島県の通園施設で働く職員は「今までは保護者に『お金のことは心配しなくていいよ。この子に一番必要なことをしましょう』と言えました。ところが、今は一番最初に『お金はこれくらいかかる』と説明しなければなりません」と同法の問題点を指摘しました。

 障害をもつ子どもたちには、発達を保障する医療・福祉サービスを受け、自立に向けて発達する権利があります。親や施設職員の訴えは、障害者自立支援法で導入された「応益負担」が重大な権利の侵害をまねいている実態を示すものです。


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