2002年12月24日(火)「しんぶん赤旗」
一九九四年の「米朝枠組み合意」は朝鮮半島の非核化をめざし、核兵器開発につながりかねない北朝鮮の施設の封鎖を決めました。その中心的施設が、今回北朝鮮が封印を解除した寧辺の黒鉛減速型原子炉でした。
発電量五メガワットと小さく、送電設備もありません。北朝鮮は発電実験用と説明していますが、もっぱらプルトニウムを抽出するための原子炉ではないかと疑惑が持たれています。
この原子炉には核分裂を制御するための減速材に黒鉛が使用されています。使用済み燃料からは核兵器の原料となるプルトニウムを取り出しやすく、九四年、北朝鮮が使用済み燃料棒を取り出したことで米国の先制核攻撃一歩手前までいきました。
この時、米朝両国はカーター元米大統領の仲介により土壇場で戦争を回避し、枠組み合意で北朝鮮は黒鉛型原子炉の凍結、使用済み核燃料棒の「安全な保管」を受け入れました。国際原子力機関（ＩＡＥＡ）による監視と、それに対する北朝鮮の協力も合意されました。今回北朝鮮が金属製の封印を切断し、監視カメラの向きを変えて使用不能にしたのは九四年に問題になった施設です。
使用済み核燃料棒約八千本の封印も取り除かれました。プルトニウム生産にはなおいくつもの工程が必要ですが、再処理すれば原爆製造に十分な量を取り出せるだけに重大です。
北朝鮮は十月十六日、米国の特使に突然、核兵器開発計画を持っていると表明しました。黒鉛型原子炉凍結の見返りだった重油の供給を米国が十二月から中止すると、核施設の再稼働宣言、原子炉と使用済み核燃料貯蔵施設の封印除去、と核開発の動きを次々に打ち出しました。（山田俊英記者）
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