日本共産党

2002年12月1日(日)「しんぶん赤旗」

列島だより

障害者支援費制度 安心して利用できるように

 来年四月から、障害者福祉の新しい制度「支援費制度」がスタートします。現行の福祉水準を後退させず、障害者が安心して利用できる制度への改善を求めて、国や自治体に向けた取り組みが広がっています。


施設訪れ、要求を聞く

祝迫県議、松崎県議候補

鹿児島県
写真
鹿児島県吉田町の障害者施設を見学する松崎真琴県議候補(中央)=11月22日

 日本共産党の祝迫かつ子鹿児島県議と、障害児施設の指導員でもあった松崎真琴党県政・福祉対策委員長(県議候補)はこのほど、障害者施設を訪問し、支援費制度の影響や要求を聞きました。

 吉田町の吉田愛青園(知的障害者更生施設)は、入所・利用者の九割以上が最重度もしくは重度の知的障害者です。

 園の試算では、現在でも足りない措置費収入と比べても、支援費制度になると、年間六百万円ほどの減収となります。

 荒武純博園長は「最重度の知的障害者のなかには、施設のなかだからこそ生きていけるという障害者がいることも知ってほしい」と、強い危機感を抱いていました。

 就学前の障害児が通う鹿児島市内の心身障害児通園施設。園長は、利用者負担が前提の支援費制度で有料になれば、通園をやめる家庭も出てくるのではないかと心配していました。「そうなれば、障害児の早期療育の道が断たれ、障害児の発達を保障する上でも、大きなマイナスになってしまう」と訴えました。

 鹿児島県は離島地域が多く、離島の施設関係者からは、支援費の基準単価の引き上げや自治体の上乗せ補助を求める声も聞かれました。

 祝迫県議は「支援費制度への不安を具体的に聞けて有意義でした。国は現場の声をよく聞き、支援費の基準を引き上げるべきです。県独自の予算措置を求めるなど頑張りたい」と話しています。 (松崎真琴県議候補)


条例制定と基盤整備を

県障協が全市町村へ

埼玉

 埼玉県障害者協議会(埼玉障協、河端静子会長)をはじめとする障害者団体は、市町村に対して、支援費制度運用のための条例制定を求める運動に取り組んでいます。

 支援費制度では、市町村の公的責任を明らかにする条例制定の義務付けはありません。

 県障害者社会参加推進センターが県内全市町村を対象に行ったアンケート調査でも、条例制定を「考えている」と答えた自治体は18%にとどまり、「検討していない」は7%。七割は「県の動向・指導を待つ」と回答しました。

 そのため、埼玉障協は、県への働きかけを強め、県と市町村の担当者がモデル条例案の作成作業を始めました。

 十一月には、条例制定と障害者福祉の基盤整備の推進などを求めて、全市町村へのキャラバンを実施しました。多くの市町村が条例化を明言しましたが、財政難などを理由に、サービスの基盤整備には消極的であることも明らかになりました。

 埼玉県の基盤整備は、今年が最終年度の県障害者プランにもとづく基盤整備が目標の八割程度、達成しても施設では数百人の待機者が生じるなど大きく遅れています。

 埼玉障協は、国と県、市町村の責任で緊急に基盤整備を図ることなどを求めて、運動を強めていくことにしています。 (埼玉県・林秀洋記者)


障害者団体と共同して

党市議団、改善へ行動

大阪・吹田

 大阪府吹田市では、社会保障推進協議会や障害者団体と、日本共産党市議団(七人)が連携をとって、支援費制度の改善に取り組んでいます。

 党市議団は、障害者福祉の問題を、議会で積極的に取り上げ、公設の障害者複合施設など充実に力を尽くしてきました。四月からは、毎月十五日、障害者関係の党後援会の協力を得て、障害者相談を開催しています。

 九月議会に、吹田社保協から、国に対して(1)福祉サービスの基盤整備(2)市町村への財政支援―を求める意見書提出の要請がありました。

 党市議団は議会運営委員会に発議し、意見書は十月二日、本会議で全会一致で可決されました。

 市は、現在、直営の福祉施策としてホームヘルプ、ガイドヘルプ、デイサービス、ショートステイ、更生施設の事業運営を行っています。

 党市議団は、障害者福祉の水準を後退させないため、市自らが、支援費制度でサービス提供できる事業者指定を受けるように、障害者団体とともに繰り返し要求しました。九月中旬、市は、直営のサービスについては、すべて事業者指定を受けることを明らかにしました。

 また、兼務ですが、現在四十五人の職員を配置し、障害者や家族の相談に応じながら、申請の説明と聞き取り調査をあわせて行っています。 (すみた清美市議)


解説

政府と県、市町村に向け責任求める運動大きく

十月から、市町村で、支援費制度を利用するための申請の受け付けが始まっていますが、各地で「十分な説明が行われていない」「選択できるほどサービスがない」「低所得者ほど利用者負担が重くなり、利用を抑制するしかない」など不安の声が広がっています。

 来年四月から始まる支援費制度では、障害者本人が利用したいサービスを決め、指定事業者と直接契約してサービスを受けることになります。市町村は、障害者が事業者に支払う利用料の一部を「支援費」として補助することになります。

 障害者に十分な情報を提供することは契約制度の大前提です。

 もともと、障害者・家族の多くは、生活の苦しさや介護の厳しさから社会的に孤立し、必要な情報とサービスを得られにくい現状にあります。

 国と自治体はすべての障害者・家族が漏れなく申請できるように、情報提供と相談体制を抜本的に強化することが求められています。

 また、現在の福祉サービスの水準を絶対後退させないで、「選べる」だけの在宅・施設サービスの基盤整備を急ぐことも緊急の課題です。

 国は来年一月までに、市町村の制度の水準を左右する支援費、利用者負担の国基準を確定する予定ですが、小泉内閣は、国の負担削減を狙って、国基準を低く抑えようとしています。

 国に対して、障害者の自立支援にふさわしい支援費の国基準を設定させ、自治体の基盤整備への財政支援の拡充などを求める運動が重要になっています。

 同時に、県や市町村に対して、地域の障害者の生活実態にもとづき、国の支援費基準への上乗せや重い負担増を防ぐ独自軽減などを求めていくことが欠かせません。 (地方部・村崎直人記者)


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