日本共産党

2002年11月30日(土)「しんぶん赤旗」

政府 コメ生産から全面撤退

食糧庁研最終報告 価格安定策を放棄


 コメ政策の「抜本的な見直し」を検討していた食糧庁の「生産調整に関する研究会」(座長・生源寺真一東大教授)は二十九日、国主導による生産調整(減反や転作など)の配分を早ければ二〇〇七年度に廃止することを盛り込んだ最終報告書をまとめ、石原葵長官に提出しました。これは、政府が、コメの生産や価格安定に対する施策から、全面的に撤退するものです。

 同研究会と並行してコメ政策を議論していた自民党は同日、廃止時期に言及しない同党案をまとめており、大島理森農水相は両案を踏まえつつ、来月三日に政府としてのコメ政策大綱を策定するとしています。

 報告書では、「二〇〇八年度に農業者・農業者団体が主役となる(配分)システムを国と連携して構築する」として、国による配分の廃止を明記。さらに、二〇〇六年度に検証し、国の配分が必要ないと判断すれば、〇七年度にも廃止するとしました。

 国の配分の廃止をめぐっては、農業者団体の中に反発がありましたが、生源寺座長によると、農業者団体も研究会の案を了承したといいます。

 このほか報告書は、生産調整に協力する、稲作農家の約3%の大規模経営に限り、稲作収入が、米価の下落で一定水準を下回った場合、所得補てんする仕組みを求めましたが、農水省の説明によると、大部分の農家は関係ないとされています。


解説

無責任農政の転換を

 食糧庁の生産調整研究会が二十九日にまとめた最終報告書は、コメの国内生産や流通を市場原理に全面的にゆだね、輸入拡大などによる米価の下落や転作などの生産調整にたいして、基本的に農家の責任で対応させようという、きわめて無責任な内容です。

 報告書については、国による生産調整の配分廃止が、最大の焦点であったかのような指摘があります。

 しかし、報告の本当の狙いは、農家が不満をもつのは“国が生産調整の配分をしているからだ”と、農家に責任を押し付けるとともに、生産調整にかかわって現在実施されている「稲作経営安定化対策」や「転作奨励金」などの、稲作農家にたいする国の助成措置・予算を廃止・縮小することです。

 そして、現在全国で百七十四万ある稲作農家(経営体)を八万程度にしぼることを目標にし、政府はできるだけ早くコメの需給と価格の安定策から全面的に手を引こうというものです。

 報告は、コメ政策の現状について「一段と混迷の度を深め、もはや放置できない状況」などと危機感をあおっています。しかし、その示す基本方向は、コメの国内生産をどんどん減らして、WTO(世界貿易機関)の「自由貿易体制」に迎合し、輸入拡大に対応しようという、亡国の道です。

 現在のコメの「余剰」や深刻な米価暴落にたいする対策では、日本共産党が主張してきたように、「ミニマムアクセス(最低輸入機会)米」といわれるコメ輸入の削減・中止、米価の下支えの確立、転作の条件を整備し、水田の多面的な活用をはかることなど、コメ政策の抜本的充実策への転換こそ求められています。

 (今田真人記者)


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