日本共産党

2002年11月19日(火)「しんぶん赤旗」

イラク和平ミッションの24日間(8)

党国際局長・参院議員 緒方靖夫

イスラム世界と広がる交流の輪


 「四十年間外務省におりますが、日本共産党が中東にこのような訪問団を送ったことは聞いたことがありません」という感想も寄せられました。それもそのはずで、私たちの党としても初めての試みだったのです。

 その「初」を象徴していたことに、「閣下」という呼びかけがあったと思います。アラブ人は客人を大切にするのですが、そこでいちばん大切なのは心です。同時に、名誉と形を重んじます。その点で、マナー、敬称はとても大事なのです。会談相手はみな「閣下」(your excellency)と呼ぶべき人でした。また、私自身も、相手からそう呼ばれました。私は、ふつうは愛称で「ヤッチャン」と呼ばれているので、「閣下」の呼びかけに、思わず回りにその対象者を探してしまいました。

閣下、陛下、殿下

 国王が閣議を主宰する国を回ったわけですから、その活動に話題が及ぶときには、国王陛下(his majesty)、皇太子殿下(his royal highness)の敬称で呼びました。外交の世界では当たり前のことですが、日本共産党代表がこうした言葉づかいをすることは、相手にもっとも強い印象を与えたように見受けました。会談がすべてスムーズにすすんだのは、日本共産党の政治的な立場、政策、歴史という財産によるものですが、このマナーも大事でした。この「閣下」が日本共産党の新しい野党外交を象徴しているともいわれました。

 昨年十月のパキスタン訪問、今年六月のマレーシア、インドネシア訪問などとイスラム世界との関係がこの一年間で大きくひろがりました。イスラム諸国は世界で六十カ国近く、十二億の人口をもっています。今回、念願のイスラム諸国会議機構(OIC)本部を訪問してその当面する課題を聞き、来年十月の次期クアラルンプール・サミットの準備についても話を聞くことができました。また、来年二月には、非同盟諸国首脳会議がやはりクアラルンプールで開催されます。イスラムの国、マレーシアが非同盟とOICの議長国になります。平和、軍縮、貧困撲滅など世界の大きな課題で重要な役割を果たしているマレーシアの役割の発揮が期待されます。

旧知の仲と会う

 訪問のなかで、これまでの交友が輪をひろげる体験をしました。この訪問に大きな貢献をしていただいたエジプト大使、カタール大使とは、実は志位和夫委員長が最初に会い、友好的な関係を開いていました。また、エジプトのナイル川を見下ろす三十四階建ての外務省ビルにわれわれを迎えたムバラク外務次官は、この八月の原水爆禁止世界大会にエジプト政府を代表して参加し、大会の成功に大きく貢献した方でした。そのときの写真を持っていきました。大会の模様やレセプションの会場で自らピアノを自在に演奏している模様の写真を渡すと、彼は補佐官に見せながらうれしそうに解説しました。その様を見ながら、旧知の仲、友人はいいものだとつくづく思いました。当然話もはずみました。来年の原水爆禁止世界大会にも代表を送りたいとのべるとともに、大量破壊兵器といえば核兵器がその最たるものであり、その廃絶をアメリカはじめ核保有国に迫るたたかいの大切さを、「新アジェンダ連合」の名で、強調していました。

 また、私たちは、各国の将来を背負う重要な人たちと友人となりました。これは今後の無形の財産です。同時に、在京大使をはじめ東京で活動している外交官の位置づけもこの訪問のなかで知ることになりました。東京という位置は、各国の外交で非常に重要なポストであり、その国に駐在する日本大使から東京駐在の大使などの能力やその国の政府内での重要な地位について聞く機会も多くありました。私は、東京でも各国の大使館を通じて相当の野党外交ができることを今度の訪問を通じて実感してきたところです。

 イラク政府は、新しい国連安保理決議一四四一を受け入れました。これから査察が行われます。イラクへの戦争は、アメリカがしようとしても必ずできると決まっているものではありません。戦争は回避できるし、それは、今後の世界の世論と運動によっています。日本共産党は今後も、あらゆる知恵をつくしてイラクと中東の和平のために最大の努力を続けていきます。(おわり)

 


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