2002年11月12日(火)「しんぶん赤旗」
十一日の衆院有事法制特別委員会の理事懇談会で、政府・与党は継続審議となっている有事三法案について「修正」案を示しました。「武力攻撃事態法案」に、「国民の保護のための法制」に関し「広く国民の意見を求め、その整備を迅速かつ集中的に推進するため、内閣に国民保護法制整備本部を置く」という条項を設けるとともに、同法制の「輪郭」を明らかにしました。
その内容は「国民保護」を掲げながら、実際には「有事」のさいに、国が国民を統制することを狙ったものとなっています。
「輪郭」は「罰則」の項目を設け、(1)保管命令に違反して救援のための緊急物資を他に転売するなどの経済的違反行為(2)原子炉等取り扱いに高度の注意義務を要するものに対する被害防止のための措置命令違反(3)警戒区域等の立ち入り制限に対する違反――などについて、「規制の効果を担保する観点から罰則を置くことを検討」と明記しています。
有事法案は、自衛隊法改悪案で「物資保管命令違反」、「立入検査拒否」に罰則を設けるとしていました。「国民保護」の名のもとに「罰則」が増えることになるのです。
「輪郭」は「国民保護法制」の「目的」に、「国全体として万全な態勢を整備」し、「国、地方公共団体等の責任の所在と権限を明確化」することをあげています。
そして武力攻撃事態法で戦争協力が義務付けられている「地方公共団体」、「指定公共機関」に加え、新たに「指定地方公共機関」なるものをつくり、それぞれに戦争協力のための「計画」づくりを求めています。
政府は「指定地方公共機関」として、「地方自治体の管轄下にある機関」と説明し、バス、鉄道、地下鉄、ガスなどを例示。今回の「輪郭」では、「放送事業者」、「ガス事業者」、「運送事業者」を明記しました。
「有事」のさいに、国の指示のもとに、自治体や公共機関をまるごと米軍や自衛隊の作戦に協力させる態勢づくりを狙ったものにほかなりません。
国民はどうなるのでしょうか。
「輪郭」では、自衛隊法と同様に、都道府県知事による物資の保管命令や収用、土地の使用・利用、医療関係者への業務従事の指示(医療の提供)などが列挙されています。
自衛隊法を適用するまでもなく、「国民保護」の名で国民を強制的に働かせたり、土地や物資を取り上げたりできるようにするのです。指示するのは都道府県知事ですが、知事が拒否すれば首相が強制執行できる仕組みです。
また、「国民に協力を求める措置の範囲」として、救助、消火活動、負傷者の搬送、保健衛生など、「国」からいわれなくても非常時には当然自発的に行うような活動を列挙。一方で、「避難」を名目にした訓練への参加や、「防災組織」への「支援」などとして、民間防衛組織づくりをねらった項目も見受けられます。