2002年10月18日(金)「しんぶん赤旗」
北朝鮮に拉致され、一時帰国を果たした五人の被害者は十七日午後、東京から家族に付き添われ、二十四年ぶりに、夢に見た新潟県や福井県の生まれ故郷の土を踏みました。
曽我ひとみさん(43)は、同県真野町(佐渡島)に帰り、嗚咽(おえつ)しながら記者会見にのぞみました。帰郷の新幹線のなかで書いたあいさつ(別項)を読み上げたあとも涙は止まりません。待ち受けた同窓生らの歓迎を受けた後、体が不自由なため外出を控えた父茂さん(70)と実家で、対面し、抱き合いました。
地村保志さん(47)と浜本富貴恵さん(47)夫妻は、福井県小浜市の市民体育館で、同窓生や市長ら地元関係者の歓迎を受けました。地村さんは、当初、「自慢することではないので、静かに処理しよう」と考え、日本の家族が北朝鮮に来るよう求めたものの、日本政府からも北朝鮮政府からも、一時帰国を説得された経緯を初めて報告。「わたしたちの問題を、日本政府、そしてみんなが自分の子どもの問題だと考えて一生懸命してくれたことを理解しました。ありがとうございました」と感謝の言葉をのべました。
地村さんは実家に帰り、今年四月に七十四歳で亡くなった母登志子さんの遺影に、「お母さん、今帰りました」と報告しました。
蓮池薫さん(45)と奥土祐木子さん(46)夫妻は、新潟県柏崎市の市民会館で、市長、市民らの出迎えを受け、友人らと抱き合って再会を喜びました。
蓮池さんは「二十四年ぶりにふるさと柏崎の地を踏み、感無量です。滞在中は親孝行したい」と述べました。
故郷での滞在について、政府は二十五日までの予定を考えていますが、最終的には本人や家族の意向で決めるとしています。
曽我ひとみさん(43)は故郷の佐渡島に帰る途中で文章を書き、十七日の記者会見で涙をこらえながら読み上げました。
みなさん、こんにちは。二十四年ぶりにふるさとに帰ってきました。とてもうれしいです。
心配をたくさんかけて本当にすみませんでした。いま私は、夢をみているようです。
人々の心、山、川、谷、みんな、あたたかく美しくみえます。空も、土地も、木も、私にささやく。
「お帰りなさい」「がんばってきたね」
だから私も、うれしそうに「帰ってきました。ありがとう」と元気で話します。
みなさん本当にありがとうございました。