2002年10月3日(木)「しんぶん赤旗」
政府が二日、公表した「拉致問題に関する現地事実調査結果」(全文)は次のとおり。
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拉致問題に関する事実調査チームは、九月二十八日から十月一日までの間、平壌を訪れ、拉致問題に関する事実調査を行ったところ、概要は以下の通り。
今回の調査においては、北朝鮮側は、現段階で可能な限りの情報を提供するとの態度で臨み、調査団としても、北朝鮮当局側からの聞き取りに加え、生存者および関係者との面会、墓地の訪問等可能な限りの調査活動を行った。この結果、生存されている五人につき、拉致被害者本人と判断して差し支えないとの結論に達した。死亡したとされる方についても、北朝鮮側より説明を聞き、関連情報の収集に努めたが、死亡を特定するにはさらなる具体的な情報が必要であると考えており、北朝鮮側もさらに調査を継続するとしている。今後とも北朝鮮に真相解明を強く求めていくこととしている。
北朝鮮外務省マ・チョルス・アジア局長より、一部わが方からの質問に答える形で、概要以下の通りの説明があった。
(1)情報提供に当たっての原則
(イ)日本人拉致事件につき、九月十七日の首脳会談で基本的説明を行い、遺憾の意とおわびを表明し、再発防止を約束した。
(ロ)われわれとしては、平壌宣言を誠実に履行する確固とした意志を持っており、拉致問題につき可能な限り十分に情報を提供するために最善を尽くす用意がある。
(ハ)ただし、現在、日朝間に国交がないため、法律上の協力に関しての協定もなく、日本側の調査に協力する法的根拠がない状態で取り扱っていることに対する理解を求める。
(2)調査経緯
(イ)これまで朝鮮赤十字会の主管の下で、日本人行方不明者の消息調査が断続的に行われてきた。しかしこの事業は、当時の日朝間の雰囲気の影響を少なからず受けたし、また、日朝関係の悪化とともに低調になっていた。
(ロ)二〇〇二年三月、朝鮮赤十字会は日本人行方不明者に対する調査を再開し、政府も協力した。最近の一連の日韓間の接触および会談により、日朝関係が成熟し、日朝関係改善への日本の意図を真摯(しんし)なものと評価し、それにふさわしい誠意を示すべきと考えた。
(ハ)八月初め、共和国国防委員会指導部の指示により、特別調査委員会が設置され、これまでをはるかに上回る最大規模の全面的な調査が行われた。結果は九月十六日に集計され、安否については十七日に伝えた通りである。本日は、特別調査委員会の委任により追加情報を提供する。
(3)事件の背景と関係者の処罰
(イ)一九七七年十一月十五日に発生した横田めぐみさん拉致事件を契機に、機関内の一部部署で日本人成人を連れて来て工作員に日本語教育、身分隠しに利用する提起がなされ、しい的に拉致が行われた。
(ロ)一九七八年六月から一九八〇年六月まで、特殊機関の一部部署により日本で成人男女九人が連れてこられた。一九八〇年初めごろ、他の特殊機関の一部の部署もこの事実を知り、自分たちでも連れてくる工作を勝手に行った。しかしながら、当該部署は、当初日本に工作ルートがなかったので、一九八〇年六月から一九八三年七月にかけて欧州で成人男女三人を連れてきた。こうして総計十三人の日本人を連れてきた。うち七人は、工作員による拉致、一人は請負業者によるもの、残る五人は本人の同意の下に連れてきた。
(ハ)この事件の責任者であるチャン・ボンリムおよびキム・ソンチョルは、一九九八年、職権乱用を含む六件の容疑で裁判にかけられた。チャンは死刑、キムは十五年の長期教化刑に処せられた。
(4)その後、わが方からの質問を受け、マ・チョルス局長より、個々の被害者について、拉致の経緯、その後の生活状況、家族関係、死亡経緯、遺品の存否等につき説明があった。
(5)また、全般にかかわる話として、以下の説明があった。
(イ)死亡証明書は各死亡者について存在する(死亡者について死亡証明書の写しが提出された)。
(ロ)ほとんどは所帯別の生活をしており、各々別個の招待所で生活していた。
(ハ)結婚登録申請書は存在する(結婚している方々につき、結婚登録申請書の写しが提出された)。
(ニ)日本人は入国後、朝鮮語の学習とともに、北朝鮮情勢につき理解するため、現実体験、現実研究を行った。
(6)わが方より、北朝鮮側説明に対し詳細な質問を行ったが、その中にはすぐには回答できないというものもあり、わが方よりはさらなる調査と回答を強く求めた。
(1)生存しているとされている五名の方々と面会し、拉致された当時の状況、北朝鮮における生活状況等につき聴取した。その結果、身体特徴およびご家族と本人の証言の比較等から、五名が拉致被害者であると判断して差し支えのないものと考えられる。今後、持ち帰ってきた科学的データの分析を行うこととしている。
(2)また、横田めぐみさんの娘とされる少女とも面会し、種々の情報を入手した。今後、さらに血液、毛髪等の科学的データの分析結果等を踏まえて最終的に確認することとする。
(3)なお、五人につき、それぞれ帰国希望を聴取したところ、日本にいるご親族との早期面会の強い希望はあるものの、北朝鮮で生まれ育った子供に配慮して、総じて早期帰国に関しては慎重であった。
死亡されたとされる方の死亡日および死亡理由につき、北朝鮮側から具体的な説明があった。死亡理由は、事故死、病死等とのことであった。死亡したとされる方の一部については、先方より提示のあった墓地跡の位置を地図上で確認の上、その一部につき実際に訪問した。ご遺骨が特定されているとの説明があった方については、本人のものと特定できる十分な根拠はなかったが、鑑定のためご遺骨を持ち帰った。また、被害者の目撃者から一部被害者の生活状況等について事情聴取するとともに、被害者の一人につき、病院の主治医から死亡の経緯等につき説明を聴取した。
現在、関連文書の提出を含め、更に詳細な情報提供を北朝鮮側に強く求めている。
今後の進め方につき、北朝鮮側は、以下の通り確認した。
(イ)今後とも、日朝平壌宣言および日朝首脳会談の合意に従い、拉致問題の真相解明のために全面的に協力する。
(ロ)死亡されたとされる方については、死亡された状況についてより客観的な情報を提供できるよう、更に調査を続ける。
(ハ)生存されているとされる方については、本人の希望を踏まえ、家族を含めて、できるだけ早期に帰国を実現させるべく最大限努力することとする。具体的な帰国時期については、今後双方で調整することとする。また、日本にいる家族等が訪朝を希望する場合は、可能な限り便宜を図ることとする。