2002年5月30日(木)「しんぶん赤旗」
防衛庁・自衛隊が情報公開請求者の思想・信条を含めた身元調査リストを作成していた問題で、中谷元・防衛庁長官は二十九日、「個人的判断(によるもの)かどうか、私も本当に個人かなという気がしている」「最初から個人の問題としていいかげんな調査をするのでなく、いろんな可能性を含め徹底解明する」とのべ、組織的関与の疑いも含めて調査し、結果を国会に報告する考えを示しました。
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衆院有事法制特別委員会で、日本共産党の赤嶺政賢議員が「防衛庁は『リストは個人的に作成した』と言えば責任を免れるかのような姿勢に終始しているが、決してそういうことではない」と強調し、組織ぐるみの疑いが濃厚であることを具体的な事実を示して追及したのに答えました。
赤嶺氏は、リストが内局、陸、海、空の各自衛隊幕僚監部の情報公開室という情報公開の部署だけでなく、海幕調査課保全室、海自中央調査隊という、情報を出させず、情報に近づく人々を警戒し、契約業者の身辺調査までする部隊にも渡されていたことなどを指摘。「(組織的に)公開請求者の動向をチェックし、国民を監視していたということだ」と批判しました。
赤嶺氏は、かつての沖縄戦で日本軍により住民が陣地づくりなどに動員され、軍の事情を知りすぎた住民を今度はスパイとみなし警戒、虐殺までした歴史を紹介。「防衛秘密という軍の論理をつきつめれば、沖縄戦の悲劇につながる問題だ」とのべ、同委員会での集中審議と関係者の参考人招致を要求しました。
日本共産党の吉井英勝議員は二十九日、衆院内閣委員会で、防衛庁の組織問題として調査するよう求めるとともに、「これを機会に全省庁を総点検し、調査結果を公表すべきだ」と迫りました。
小泉純一郎首相は「厳正な措置が必要だ」と答弁、情報公開法を担当する片山虎之助総務相は「調査はわれわれも検討する」と答えました。
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日本共産党の志位和夫委員長は二十九日午後、国会内で定例記者会見し、防衛庁によるリスト作成問題について「リスト作成は防衛庁の組織的関与のもとに、防衛庁ぐるみで行われていた疑惑がきわめて濃厚だ」と指摘しました。
志位氏は、今回の事件について「国民の人権について、防衛庁自身が不当・不法な侵害を行ったという重大問題だ」とし、国会が事実関係の徹底的な糾明の責任を果たすべきだと述べました。
さらに、有事三法案が海外での自衛隊の武力行使に道を開くこととあわせ、国民の自由と人権を制約する重大な内容をもち、「自衛隊の活動に必要」とされれば、個別法さえつくればいくらでも人権の制約ができるようになっていると指摘。「法案が、かりに成立させられたら、その執行の主役になっていくのは自衛隊だ。その自衛隊が、法律ができる前から国民の思想やプライバシーにずかずかと土足で踏み入るような不法・不当な調査をやっていたことは、絶対にゆるがせにできない問題だ。戦前の憲兵隊の思想調査を思わせるような活動を、すでに始めていることは非常に重大だ」と告発しました。
今回の問題についての資料と政府の報告書を衆院有事法制特別委員会に提出すること、関係者の国会招致、集中的審議を求め、有事法制特別委でこれらを最優先の課題としてとりくむべきだとの考えを示しました。
記者会見のなかで志位委員長は、防衛庁の「海幕情報公開室に勤務していた三佐が個人的に作成していた」との弁明は「とうてい国民を納得させるものではない」と述べ、防衛庁自身の説明によっても組織的な関与は明らかだとして、四点にわたって指摘しました。
第一は、リストには海自だけでなく陸自、空自、内部部局を含め防衛庁全体に対する請求分が記載されていたことです。
第二は、リスト作成の理由で、三佐の上司が「どんな人物でどのような背景で請求してくるのか」などとたずねることがあったため、業務上の目的があって作成していたと説明していることです。
第三は、請求者の身元の情報を防衛庁内の他の部署の担当者などから聞き取っていたことです。
第四は、リストは三佐個人で所有していたわけではなく、直属の上司、内局、陸・海・空自の各情報公開室の担当者、中央調査隊にも上げられ、七人にリストがわたっていたと認めていることです。