2002年4月18日(木)「しんぶん赤旗」
政界に激震をもたらしている日本共産党の志位和夫委員長が公表した官房機密費文書。「あいまいにするのは認められない。国民に明らかにすべきだ」(十六日、中川昭一・自民党広報本部長)―ついに自民党の中からも、こんな声が飛び出しました。公表後、裏づけ証言が相次ぎ、機密費文書の真実性はいよいよ動かしがたいものになっています。
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文書は、宮沢内閣・加藤紘一官房長官時代(一九九一年十一月〜九二年十二月)の官房機密費の使途を記録した「金銭出納帳」。支出年月日、支出先、金額が詳細に記録されています。
支出先に名前があがる小泉内閣の閣僚が十六日、それぞれコメントしました。
尾身幸次科学技術・沖縄北方担当相(九二年四月三日 パーティー 五十万円)「まったく覚えていない。記憶も記録もないと答えたんだけどね」
片山虎之助総務相(九二年十月二十七日 パーティー 二十万円)「事務所の方に聞いてみたら、パーティーをやったときに、官房長官、副長官がこられて、そのときのあれではないだろうかということです。確認できないですよね、そういうのは」
武部勤農水相(九一年十一月十四日 パーティー 十万円)「わかりませんね。はっきり申し上げて」
中谷元・防衛庁長官(九二年二月十七日 パーティー 三十万円)「記録が残っておりませんので、現時点でいくらだったかというようなことも分かりませんので」
「そんなパーティーはなかった」とか「もらっていない」といった否定のコメントは、一つもありませんでした。
否定しないどころか、「たしかにもらった」「その日付に間違いない」という支出先の証言も少なくありません。
決定的な状況証拠もあります。
たとえば、「総務会メンバー39人(背広)」と記載された千百七十万円(九一年十二月十七日)。日本共産党の裏づけ調査は、当時の「政治的背景」について、次のように書いています。
「当時、宮沢派の衛藤征士郎氏が、党大会につぐ自民党の最高意思決定機関である総務のポスト入りをめざしていたが、『当選六回(衆院)以上』という資格に欠けるため、総務会入りにストップがかかっていた。結局、『当選六回(衆院)』という原則が崩され、衛藤氏は十二月二十六日の総務会で正式に総務になった」
「日経」十七日付一面コラム「春秋」が、この背景に迫っています。「一九九一年十一月、誕生したばかりの宮沢喜一内閣は、党内基盤が弱くスタートからごたごた続きだった。何しろ、総務会のメンバーが決まらない。官邸から党運営にも乗り出した加藤紘一官房長官にとっては、将来をかけた時期だった」
「総務会メンバーは三十人だが、入れ替わったメンバーを含めると数はぴたり。『いつまでも空席にできない』という理由で十二月二十六日に決まったのは一人三十万円の背広が贈られたせいだろうか」
こうした数々の証言や事実によって、資料の真実性は動かしがたいものになっているのです。だから、マスコミも全国紙、地方紙を問わず、「事実の解明 政府は逃げるな」「棚上げせず真偽確認を」など事実究明を政府に求めるとともに、「カギは、非公開から公開への転換である」(河北新報)、「全面公開か透明度を格段に高める努力をすべきだ」(毎日)と求めているのです。冒頭に紹介したように、自民党内からも真相公表の声が出るほどです。
「官房機密費の内容ではない」(公明党・冬柴幹事長)など、なんとか資料の真実性を弱めたいとする立場からの議論も一部にありますが、資料の真実性と内外の世論にもっと素直になるべきでしょう。
古賀誠自民党前幹事長「国対副委員長時代に一度だけパーティーを開いたことがある。おそらくその際のお祝いか、パーティー券を購入してもらったのだと思う。書いてある以上は、もらっていたのではないか」(12日)
江田五月民主党参院議員事務所「加藤氏がパーティー券購入かお祝いかの形で、協力をしてくれたことはあると思う。その金額は、五十万円といわれれば、それを否定する根拠はない。江田本人は記憶していないが、事務担当者は五十万円との記憶がある」(12日)
田辺誠氏(当時の社会党委員長)「推測すると(当時の宮沢)首相が党に渡したのではないか。党本部主催のパーティーなので具体的にどう処理したかは手元に記録がなく、正確には答えられない」(「読売」13日付)
二見伸明自由党前衆院議員(当時の公明党政審会長)「もらったのもこの通り、本当だよ」「議員会館に加藤官房長官の使いがきて、このあいだのお礼だといってもってきた。機密費を使ったと言ってくれれば、それなら返そう、ポケットマネーならありがとう」(15日放映の民放テレビ)
ジャーナリストの田原総一朗氏「私もこのなかに入っている。女房にきいたら、女房の父がなくなっている。(香典袋を示し)『御仏前 加藤紘一』5万円と書いてある。もちろん、これ官房機密費だなんて」(14日放映の民放テレビ)
ジャーナリストの嶌(しま)信彦氏「リアリティーがあるのが、国会如蘭(じょらん)会というのがある。これは僕の高校の同窓会だ。国会議員の人たちが集まるのが、国会如蘭会といって、マスコミの人なども会費を払って行く。この日付をメモ帳で調べると、僕はこの日に行っているのですよ。(会費は)1万円なんですよ。こういうのを見ると非常にリアリティーがある」(15日放映の民放テレビ)
高知新聞「育樹祭とは一九九二年に皇太子殿下が出席され、吾北村程野などで開かれた全国育樹祭のことだろう」(「小社会」16日付)